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 機能性表示食品について取材をしている時、消費者庁の担当者が、「健康食品と薬では、有効性の科学的根拠が違う」と発言していて、「あーあ」という気持ちになった。臨床試験という同一のサイエンスの手法で検証される以上、本当は「両者の科学的根拠は同じ」と考えるのが適切である。違うのは、有効成分や被験者といった試験条件である。

 制度をデザインした役所がこういう認識では、機能性表示食品のサイエンスがおろそかにされるのも無理はないと感じた。機能性表示食品とは、「脂肪の吸収をおだやかにします」など、健康の維持や増進に役立つ文言が表示された食品のこと。ヨーグルトや乳酸菌飲料、その他のドリンク(飲料)類、サプリメントなど、幅広い食品で展開されている。

 残念ながら、その有効性を検証する研究の質は年々悪化しており、粗悪な論文が量産されている。果ては、食品メーカーと学術誌が“癒着”を起こしている。「科学的根拠に基づいて機能性を表示する」という制度のコンセプトは、どこ吹く風といった様子だ。

 この状況について疑問を呈すると、社会通念を持ち出して正当化してくるケースがある。「社会通念上求められる機能性表示食品の科学的妥当性は、医薬品のそれより低い」ことから、「機能性表示食品は、医薬品よりも科学的妥当性が低くても根拠として成立する」と飛躍する。だが、社会通念とサイエンスは別の次元にある。機能性表示食品がサイエンスである以上、社会通念に依存せず、学問の研究方法を探求する「方法論」の知見に則った研究がなされるべきと言える。

今一度サイエンスの見直しを

 正直に言えば、記者は健康食品における疑似科学について、一消費者としてはどうでもいいと思っている。「なんだかなあ」とは感じるが、「安くて健康被害がないなら別にいいじゃないか」という気もする。健康食品を信じている消費者が、何らかの効果を実感し、うれしい気持ちになっているとしたら、その限りにおいて製品に価値があるとも思う。

 サイエンスという観点で気の毒だと感じているのが、食品メーカーの研究者である。取材に応じた研究者は、「会社の方針で機能性表示食品の開発に従事させられているが、研究倫理にもとると感じる出来事が多く、できればやりたくない」と話す。違法ギリギリ、もしくはアウトと考えられる製品を売り出すために、科学的に根拠が薄い研究をしなくてはならず、しかも成果は自分の名前と共に発表される。大変なジレンマだろう。食品メーカーの研究者といえば、有名大学の博士や修士を卒業した粒ぞろいである。その人たちが日夜、低質な論文を書いている現状は、誰の目にもおかしいと映るだろう。