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ルネサスエレクトロニクスのデザインイン(商談獲得)が好調だ。同社社長兼CEO(最高経営責任者)の柴田英利氏は2020年8月に開催した戦略説明会で、「上期(1~6月)の自動車向けの受注額が前年同期比でほぼ倍増し、通年目標の8割を占めた」と説明した。
「ホームラン級の大きな受注が入った」(同氏)という。自動車向けは1件当たりの規模が大きく、タイミングによって上下しやすい。とはいえ、ルネサスの車載SoC(System on Chip)はADAS(先進運転支援システム)市場を中心にシェアを伸ばしているという。
ADAS向けの車載SoCといえば、米Intel(インテル)傘下のイスラエルMobileye(モービルアイ)が圧倒的な強さを持つ(関連記事)。それにもかかわらず、ルネサスが商談を獲得できている背景として、柴田氏は「大手自動車メーカーが自前でソフトウエアを開発していること」を挙げた。
例えば、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は“ビークルOS”と呼ぶ独自のソフトウエア基盤を整備しており、ソフトの内製比率を現状の10%未満から2025年に60%に高める計画である。こうした企業にとって、ソフトとSoCをセットで販売するモービルアイの方針は受け入れにくいのかもしれない。一方、ルネサスはあくまで半導体のハードを売る事業モデルであり、ユーザーの要求にきめ細やかに対応する。