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 「この試験を受けていただくにあたり、少しストレスがかかってしまうかもしれませんので、そこだけご理解いただければと思います」――。フランス発のエンジニア養成機関「42 Tokyo」の長谷川文二郎事務局長がまず挨拶した。2021年6月22日に開校1周年を迎えた42 Tokyoで、筆者は同日実施された入試体験会に参加する機会を得た。

42 Tokyoの教室。42は世界中で運営されているエンジニア養成校だ
42 Tokyoの教室。42は世界中で運営されているエンジニア養成校だ
(撮影:日経クロステック)
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 42 Tokyoは2021年8月時点で493人が在籍している。入学試験は2段階だ。1段階目のWebテストを通過し、さらに4週間にわたる「Piscine(ピシン)」という入学試験に受かる必要がある。昨年度のPiscine合格者数は571人で、2つの試験の通算合格率は2021年8月時点でわずか4.05%だ。

 Webテストの申し込みは42 Tokyoのサイトを通じていつでも可能で、合格した人はPiscineの日程を選択できる。2021年度はPiscineの開始日が1月~12月までの期間で合計11あり、Webテストの受験日にかかわらずどの日程を選んでもよい。入学日も2021年10月、2022年1月、4月といった3カ月おきに用意され、Piscine合格者は合格した月以降、直近3つの日程から選べる。

 42 Tokyoでの学習は現在新型コロナ禍の影響によりオンラインがメインになり、それに伴ってPiscineもオンラインでいつでもどこからでも取り組めるようになった。

何の説明もないまま試験は始まった

 Piscineについて長谷川事務局長は、「事前に必要な知識に関するレクチャーがほとんどないまま、『こういうプログラムを作れ』と受験生に解けるまで根気のいる課題をぶつける。受験生は自分で調べたり周りの受験生に聞いたりして課題を進めていく」と説明する。冒頭に長谷川事務局長が「ストレスがかかる」と注意していたのはまさにこの点で、入試体験も課題で使うコマンドについて何の説明もないまま「では始めてください」と始まった。

 入試がこうしたシステムになっている背景には「エンジニアにとって他人とのコミュニケーション能力が重要だ」(長谷川事務局長)という42の理念がある。ここには「先生」がいない。生徒同士が課題について相談し教え合い、作成したコードやプログラムなどを互いに評価し合う「ピアラーニング」を採用している。「自分で調べてコードを書いて、ピアラーニングで互いに教え合いクリアできれば次の課題に進む。これこそエンジニアのライフスタイルが身につく場所ではないか」(同)。