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 富士通がデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に突き進んでいる。「DX企業としてデジタル社会の実現を目指す。働き方、ものづくり、医療など様々な分野で新しい時代の価値を提供する」。時田隆仁社長は2020年7月30日、経営方針説明会でこう宣言した。

 DX戦略子会社Ridgelinez(リッジラインズ)を2020年1月に設立、DXによる社会課題解決事業に取り組むソーシャルデザイン事業本部を7月に新設、社員13万人をDX人材とするためのデザイン思考などの習得、全社・部門横断の変革を担うDX Officerの配置……。DX戦略推進へ矢継ぎ早に手を打っている。

 同社は本業の「テクノロジーソリューション」の営業利益率について、2022年度(2023年3月期)に10%と2019年度より4ポイント高める目標を掲げている。達成に向けて重視するのがDX関連事業の成長だ。2022年度の売上収益目標3兆5000億円のうち、DXなどデジタル関連を37%と19年度比で6ポイント高める方針だ。

結局、DXで何をやる?

 ただ、記者は富士通のDX戦略に何とも言えないモヤモヤした感覚を2つ抱いている。きっかけは2020年8月6日、子会社のRidgelinezが開催したイベントを聴講したことだ。イベントには同社の今井俊哉社長が登壇し、自らのDXに対する考え方や事業戦略を語った。

 記者が富士通のDX戦略に抱くモヤっと感、その1つめは同社が目指すDXの姿そのものだ。DXという言葉自体のあいまいさも伴って、何を成そうとしているのかいまひとつ判然としない。

 Ridgelinezの今井社長はイベントで、自身の考えるDXのポイントをこう述べた。「ポイントは英語でトランスフォーメーションの略語を指すXにある。顧客の経営環境や事業環境が変わり、何か違うことや新しいことに取り組む必要性が生じたとき、デジタル技術で実現をサポートする。これがDXだ」

 DXの解釈に対する入り口としては納得できる。が、まだ捉え方が広い印象だ。例えば新型コロナ禍で急拡大したテレワーク。オフィスの外からインターネット経由で仕事ができるようになればDXを成したと呼べるのか。

 今井社長は人事評価制度や事務手続きなど、柔軟な働き方を促すようプロセスを改めるところまで踏み込むべきだと指摘した。「離れていても社内と同じことができるようにするのがポイントだ」。例えば人事評価制度については、時間ではなく成果で評価するよう改める。「離れていると、社員が何をしているか分からない。成果に基づいた人事評価がいや応なく求められるようになる」。テレワークを前提に働き方を見直すならば、それに応じた人事評価制度が「経営の必然性として加わるはずだ。業務プロセスや人材のマネジメントを変えないと成果は上がらない。当社はここに貢献したい」。記者にもおおむね、異論はない。

 ただ、ここでモヤっと感が募る。「それってITによる業務改革と以前から呼んでいたのでは?」。例えばERP(統合基幹業務システム)パッケージを使った業務改革が1990年代に一大ブームとなった。ではERPパッケージを導入すればDXを成し遂げたと言えるのか。言ってもいいような気もするし、違う気もする。