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 坂本さん、アカハタとカサゴが釣れました。フォールのアクションが派手で、根魚にいい感じです。シイラも掛けたのですが、バレちゃいました・・・・・・。

釣れたアカハタ
釣れたアカハタ
(写真:日経Automotive)
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 唐突な釣果報告と個人的なメッセージになってしまい恐縮だが、注目していただきたいのは魚の口元。アカハタが食いついたイワシ模様のルアー(疑似餌)だ。

 実はこれ、電池ベンチャーのATTACCATO(アタッカート)が試作したもの。同社副社長の坂本太地氏から試作ルアーを貸してもらい、2022年8月某日、釣りに行ってきた。

ATTACCATOが試作したルアー
ATTACCATOが試作したルアー
金属製のルアーである「メタルジグ」。3D-CADで設計した。3Dプリンターで出力したものからシリコン(Si)製の鋳型(写真左)を作製した。(写真:日経Automotive)
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鉛蓄電池のリサイクル候補に

 ATTACCATOは産業技術総合研究所の電池技術者らが立ち上げた、ちゃんとした(失礼!)電池ベンチャー。シリコン(Si)を負極に使った高容量電池や極低温の環境下でも使える特殊用途電池など、技術力に定評のある企業である。日経BPの電気自動車(EV)分解プロジェクトでは、EV用電池の組成や性能を分析していただいた。

 ではなぜ、電池ベンチャーがルアーを開発するのか――。

 開発のきっかけは、釣り好きの坂本氏が「自動車用の鉛(Pb)蓄電池をリサイクルすればルアーを作れるのではと思った」ことだった。金属製のルアーである「メタルジグ」の多くがPb製であることが、Pb蓄電池のリサイクルと結びついた。

 だが、開発はすぐに壁にぶつかる。リサイクル材が柔らかすぎるのだ。メタルジグに使うPbは、岩や海底などにぶつかっても変形しにくい硬度を確保している。Pbにアンチモン(Sb)を8~12%添加するのが一般的だ。

 リサイクルしたPb材にSbを添加するとなると、コストが跳ね上がる。Pb蓄電池を活用して安価にメタルジグを製造するもくろみが外れた。

 それでも、坂本氏の手と思考は止まらない。そして、ATTACCATO社長の向井孝志氏もブレーキをかけない。同社の企業理念は「面白くないとイヤ」だ。「メイン事業である電池技術の開発さえきっちりやってくれれば、他は自由にしてもらってOK」(向井氏)という。それに、異分野での発想や異業種とのつながりが、電池事業に還元されていくという。

ルアーのコーティングに電池技術

 坂本氏が次に目を付けたのが、ルアー表面を保護するコーティング材だ。メタルジグは、塗料が剥げないようにエポキシ樹脂などで表面を被覆している。ここに電池技術を活用できると考えた。