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 市場に出回った車両の走行データを活用して、新たなサービスや機能を提供する。そうした動きが日本の自動車メーカーの中でも活発化してきている。2021年8月、ホンダとトヨタ自動車は、相次いで提供開始あるいは提供予定の新サービス・機能について明らかにした。

 ホンダが発表したのが、同月に提供を開始した同社初の有償サービス「旅行時間表示サービス」である。期間限定で渋滞が問題になる路上に移設可能な表示機を設置して、目的地までの所要時間をルート別に表示し、渋滞の緩和につなげるというものだ(図1)。所要時間の算出に、同社の通信型カー・ナビゲーション・システム(カーナビ)「インターナビ」を装着しコネクテッドサービス会員となっているホンダ車の走行データを活用する。

図1 移設可能な表示機を路上に設置した例
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図1 移設可能な表示機を路上に設置した例
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図1 移設可能な表示機を路上に設置した例
所要時間は、リンク(分岐から次の分岐点までの区間)単位で表示している。表示機は文字だけでなく、画像や絵を表示することも可能。具体的な迂回路を絵で示したり、パラパラ漫画のように見せたりすることもできるという。(出所:ホンダ)

 走行データの取得が可能な同ホンダ車は、21年7月末時点で約370万台。対象区域を走行中の同ホンダ車から取得した走行データから、過去30分の所要時間を求め、表示機に示す所要時間を5分ごとに更新する。

 同サービスで想定しているユーザーは、花見や紅葉などの季節限定の観光スポットを抱える自治体や事業者、花火大会などのイベントを主催する自治体や事業者、ショッピングセンターやアウトレットモールなどの商業施設、道路工事の実施主体者などである。同社によれば同年秋から複数件の同サービスの導入が予定されている。

 費用は利用方法によって変わるので非公表だが、表示機1台当たりの1カ月のリース料は45万円。さらに、データの費用などが追加で掛かるとしている。

 ホンダでは、車両の走行データを活用したサービスを「Honda Drive Data Service」と呼び、17年から取り組んできた。「走行データに基づく急ブレーキの多発箇所の情報を埼玉県に提供し、道路の安全対策や道路政策の立案を支援する」「車両のセンサーデータから路面に穴が開いていたり劣化していたりする場所を分析して道路管理者に提供して道路のメンテナンスに活用してもらう」など様々な取り組みに挑戦してきた。同社モビリティサービス事業本部コネクテッド事業統括部の福森穣氏は、「(そうした様々な取り組みの中に)サービスとして芽が出てきたものが、ようやくぽつぽつと現れてきた。今はそれを育てていくフェーズ」と説明する。

 旅行時間表示サービスは、ホンダのコネクテッドサービス会員から走行データを収集するが、同会員に向けたサービスではない。この点に対して、同氏は「データを提供してもらう会員に還元できるくらいまで(サービス)を育てたい」と語る。