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 「再びリアル・ライヴができるようになるまでのあいだ、違う可能性を必死で探さなくてはなりません」(図1)。

図1 山下達郎氏が「MUSIC/SLASH」に寄せた文章
図1 山下達郎氏が「MUSIC/SLASH」に寄せた文章
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 ミュージシャンの山下達郎氏が、ある動画配信サービスにこんな文章を寄せた。同氏はこれまで、音楽体験を損ねるかもしれないという考えからリアルでのライブ公演を中心に活動し、テレビ番組への出演やストリーミング配信に積極的に取り組んでこなかった。

 しかし、新型コロナウイルスで社会情勢が大きく変わった。感染拡大を防ぐために「3密」を避けた行動が基本となり、「多くの人を集める」ことが価値であったライブエンタメ業界に突然、危機が訪れた。

 そこで山下氏はミュージシャンとファンとの新たな関係を模索するため、配信を通じてファンに音楽を届けると決めた(図2)。2020年7月30日、2018年に公開した過去のライブ映像を配信サービス「MUSIC/SLASH」を通じてファンに届け、熱狂させた。

図2 氣志團万博での山下達郎氏
図2 氣志團万博での山下達郎氏
(写真:菊地英二)
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 その技術を支援したのがSPOON(東京・港)だ。イベント企画や映像中継システムなどを手掛ける企業で、配信サービスの運営も担う。このサービスの特徴は「音声が業界最高品質であること」(代表取締役の谷田光晴氏)。1秒間のデータ転送量を示す単位で記すと、音声が384kbpsだ。一般的なオンライン配信だと96~194kbpsほどで、この数字はBSデジタル放送の320kbpsをも上回る。もともと同社は山下氏のツアーの演出などを担当しており、今回のライブ配信の機会につながった。