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 「いろいろ考えているが、外的要因もあるのでそのつど調整しながら進めている。経営に自信をもって進めているので、持続可能な経営をこれからもしていきたいと強く思っている」(PayPayの中山一郎社長)――。

 2018年に登場してから「100億円還元」などの大規模キャンペーンで一挙にQRコード決済のシェア最大手に躍り出て、決済市場で注目を集め続けるPayPay。そんな同社がこれまで無料だった中小加盟店向け手数料を、1.6~1.98%へと有料化するという。同社にとっても決済市場全体にとっても一大転換点を迎えるとあって、2021年8月19日の手数料有料化に関するオンライン会見で何を話すのか気になっていた。なかでも記者が注目したのは、有料化に伴い同社の収益性はどうなるのかという点だ。

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 そして会見の最後、質疑応答で中山社長が語ったのが冒頭のコメントだ。記者は驚いた。「持続可能な経営」という力強い言葉が出てくるとは想像もしなかったからだ。

 インターネット上にプラットフォームビジネスを確立するには、最初は赤字覚悟で普及促進を図るのが常道といわれる。決算書の数字からその過酷さが手に取るように分かるが、PayPayにとっては「予定通り」である。決済手数料を開始から3年間無料とすることは、同社が2018年7月に出したサービス開始のプレスリリースに明記してあった。

 あらかじめ自ら退路を断っていたからこそ、100億円還元キャンペーンや膨大なテレビCM出稿などで攻めの姿勢を貫いたのだろう。2021年8月の会見によると、QRコード決済市場における同社のシェアは決済額ベースで68%、決済回数ベースで66%。少なくとも現状では、圧倒的な「勝ち組」といえよう。

 そして3年間が経過した今、中小加盟店向け手数料を有料化することで、拡大重視から収益確保にかじを切ろうとしている。これも予定通りではあるものの、「持続可能な経営」への道のりは、これまでの拡大フェーズ以上に厳しそうだ。