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3回の減資で親会社が負担した額は…

 同社が開示している2018年6月の設立から3カ年(1年目は9.5カ月の変則決算)の決算公告をひもとくと、同社が「勝ち組」となるまでに投じた先行投資のあまりの巨大さに身震いする。し烈を極める決済市場で競争優位を獲得するには、これまで「持続可能な経営」などというものになりふり構っていられない状況だったことがうかがえる。

 例えば3カ年の最終赤字の累計額は1931億円。同じ期間の営業収益(売上高に相当)の累計額397億円に対し5倍近い規模だ。この巨額赤字を埋め合わせるため同社は、2020年2月、2020年7月、2021年6月の3回にわたる減資で、資本金・資本準備金を取り崩している。その総額は最終赤字の累計額と同じ1931億円だ。

PayPayの過去3カ年の貸借対照表。本来なら各年度の純損失が累積で積み上がる利益剰余金のマイナスがそうなっておらず(表内の太字部分)、資本金・資本準備金の取り崩しによりリセットしていることが分かる
PayPayの過去3カ年の貸借対照表。本来なら各年度の純損失が累積で積み上がる利益剰余金のマイナスがそうなっておらず(表内の太字部分)、資本金・資本準備金の取り崩しによりリセットしていることが分かる
(出所:PayPayの決算公告を基に日経クロステックが作成)
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PayPayの損益計算書。直近2カ年は1000億円前後の営業費用を投じている(表内の太字部分)など、赤字覚悟の拡大路線を裏付ける数字が並ぶ
PayPayの損益計算書。直近2カ年は1000億円前後の営業費用を投じている(表内の太字部分)など、赤字覚悟の拡大路線を裏付ける数字が並ぶ
(出所:PayPayの決算公告を基に日経クロステックが作成)
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 これだけの規模で減資ばかりを繰り返すと債務超過になるため、ソフトバンクグループ(SBG)、ソフトバンク(SBKK)、ヤフーの親会社3社が増資を引き受け、追加の事業資金を注入しているとみられる。少なくとも過去3カ年の財務状況に関していえば、PayPayはまだ親会社から独り立ちして「持続可能な経営」ができているわけではない。

 視点をPayPayの過去から未来に向けよう。巨額の先行投資によって圧倒的なシェアを獲得したPayPayは、1.6~1.98%という中小加盟店向けの決済手数料設定を機に最終黒字を確保し、親会社からの資本注入に依存せず「持続可能な経営」ができるようになるのか。記者は必ずしも容易にはいかないと考えている。

 そう考える理由は大きく2点ある。