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「持続可能な経営」への2つの壁

 第1は中小の店舗が加盟する場合の金銭的な負担の重さだ。例えば1カ月あたり26日間営業し、PayPayによる決済額が1日あたり2万円と仮定すると、月額1980円で独自情報をPayPay利用者へ発信できる機能などを持つ店舗向けCRMツール「PayPayマイストア ライトプラン」を契約して手数料率1.6%が適用される場合で1万300円。PayPayマイストアを契約せず手数料率1.98%が適用される場合で1万296円となる。他のQRコード決済やクレジットカードなどの決済手数料と比べれば低い料率とはいえ、中小の店舗にとって月1万円規模の出費は無視できないだろう。

 また、PayPayは2021年10月以降、売上金の加盟店口座への振り込みが原則月1回となる。振り込みを早めてもらうには別途申し込みが必要で、手数料もかかるようになる。上記の中小店舗の仮定をそのまま当てはめると、2万円×26日分にあたる52万円の売上金を店主が手にできるのは月1回の所定の振込日ということになり、運転資本が十分でない中小の店舗だと従業員への給料や家賃、光熱費の支払いや次の仕入れに影響が出る可能性もある。

 第2は親会社からの観点だ。ソフトバンクの宮川潤一社長は2021年5月の決算会見で「将来的にPayPayには、事業として自立していってほしいと思っている。そのためには収益化が必須。これらはそう遠くない時期に起こり得る」とコメントしている。裏を返せばこのコメントは「将来的に親会社からPayPayへの資本注入を縮小・停止したいし、そう遠くない時期にPayPayの資本金や資本準備金が目減りする状況ではなくなる」という示唆となる。

 PayPayの現在の株主であるSBGとSBKKは上場企業、そしてヤフーも持ち株会社のZホールディングス(ZHD)が上場企業だ。上述のようにPayPayはこれまでの3年間、赤字覚悟で拡大路線を採ることを宣言していたため、上場3社の株主もPayPayの収益化をせかすことなく状況を見守っていただろう。しかし今後は、仮にPayPayが純損失を出してもこれまでの3年間のように親会社が減増資で追加の資本注入をすることに対し、上場3社の株主の目が厳しくなることが予想される。そうなるとPayPayも、これまでのように年間1000億円近い営業費用を湯水のように投じる戦略を採りづらくなる可能性もある。

 もちろん、PayPayも手をこまぬいているわけではない。これまでの赤字覚悟の拡大路線から「持続可能な経営」にかじを切るべく、既にいくつかの策を講じている。中小加盟店向け決済手数料の有料化もその1つだが、それ以外にも複数の打ち手が見受けられる。