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 FinTech分野のユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)は数多い。調査会社の米CB Insights(CBインサイツ)が提供する時価総額ランキングを見ると、トップ10に4社が名を連ねる。うち3社は、後払い(BNPL)サービスで存在感を強めているスウェーデンKlarna(クラーナ)、2020年に日本進出を果たしたスマートフォン決済の英Revolut(レボリュート)、そしてネオバンクのブラジルNubank(ヌーバンク)。いずれもFinTech業界では著名な企業だ。

 もう1社が、ランキング2位の米Stripe(ストライプ)である(ちなみに1位は「TikTok」などを運営する中国ByteDance)。2021年9月時点での評価額は約950億ドル(約10兆4000億円)で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(9月9日時点で約8兆5000億円)を上回る。2020年6月時点でストライプの評価額は約360億ドル(約3兆9700億円)だったことを考えると、急成長ぶりがうかがえる。

 ストライプはEC(電子商取引)をはじめとするオンライン事業者向けに、支払いの受け付けや入金処理といった決済サービスを提供する。初期費用が不要で、決済機能を簡単に実装できる点が売り物で、数行のコードを書けばAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じてサービスを利用できる。米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Google(グーグル)、米Facebook(フェイスブック)、米Zoom Video Communications(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)といった大手テック企業が採用。日本市場にも2016年から本格的に参入している。

複雑な税務処理、ローカルルールも多数

 ストライプは決済サービスの強化を続けている。中でもユニークな新機能が、2021年6月に提供を始めた「Stripe Tax」だ。グローバルな税務処理を支援するもので、米国、英国、ドイツ、オーストラリアなど30カ国以上の売上税や付加価値税(VAT)、物品サービス税(GST)に関する計算と徴収を自動化する。徴税が必要な取引を企業に伝える、納税申告に必要なリポートを作成する、といった機能も提供する。

 「始めた時点でゴールが見えていたわけではない。挑戦的なプロジェクトだった」。Stripe Taxの開発でプロジェクトマネジャーを担当する、ストライプのマイケル・カーニー(Michael Carney)Stripe Taxビジネスリードはこう振り返る。

ストライプのマイケル・カーニー(Michael Carney)氏
ストライプのマイケル・カーニー(Michael Carney)氏
(写真提供:Stripe)
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 グローバルに商品やサービスを提供するオンライン事業者にとって、税務処理はやっかいな代物だ。「税計算のルールはそもそも複雑で、しかも地域ごとに内容が異なる。この点がビジネスの障壁になっていた」(カーニー氏)。

 例えばEU(欧州連合)では国ごとに税率が異なるだけでなく、支払いをしたのが個人か法人かによっても違ってくる。「ドイツでは(食用の)ウサギと(ペットの)モルモットで税率が異なる」(カーニー氏)といったローカルルールも多数存在する。米国でも州ごとにルールが異なり、カウボーイブーツはほとんどの州で消費税の対象だが、「テキサス州では非課税」(同)。一方でテキサス州では、ハイキングブーツが課税対象になるという。

 しかも、税に関するルールは定期的に変更される。「EUがVATに関するルールを変更した際は、対応するために100ページ超のドキュメントを読み込む必要がある」とカーニー氏は話す。こうした税務対応を自力でこなそうとすると、気が遠くなるほどの手間と時間がかかるのは容易に想像がつく。

 ストライプがEUのユーザーに調査したところ、「税務対応はますます大変になりつつある。この作業をサポートしてくれれば、売り上げをもっと伸ばせる」との声が上がった。「顧客が自社のビジネスに専念し、より成果を上げてもらえるようにするために、Stripe Taxの開発を決めた」とカーニー氏は説明する。