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 五輪・パラリンピックの招致が決まった2013年以降、東京都心部の都市開発は急進展した。日経アーキテクチュアは、これを「東京大改造」と呼び、継続的に追跡してきた。思惑が外れた格好の節目である“2020”が過ぎ、やや沈静化していたかに見える事業提案が、再び活性化している。

 国が規制緩和型の都市再生を後押しする中で、2010年代後半は明らかに物量が跳ね上がり、大規模プロジェクトが次々に立ち上がった。まちづくりを担う区や東京都以上に、国がイニシアチブを取る場面が目立った。開発にゴーサインを出すまでのスピードを上げるのが、その目的だ。

 具体的な方策の1つが、「国家戦略特区」の導入だった。創業、観光、医療、教育、近未来技術など多様なメニューを持つが、やはり「都市再生」分野の動きが盛んだった。過半のプロジェクトが防災面、環境面の機能更新を目的とする他、東京の国際競争力の向上なども、開発に携わる事業者の重要なミッションとされてきた。

 大規模プロジェクトを継続的に観測してきたムック本「東京大改造マップ」のための調査によると、再開発などの完了(開業)は確かに19年から20年春前後に集中していた。都心3区、臨海部、そして渋谷、新宿、池袋が、その主な舞台となった。

東京ミッドタウン八重洲
東京ミッドタウン八重洲
JR東京駅の駅舎越しに八重洲口方向を見る。右手が、建設中の「東京ミッドタウン八重洲」(八重洲2丁目北地区)。施行者は八重洲二丁目北地区市街地再開発組合、基本・実施設計者は日本設計、実施設計・施工者は竹中工務店、マスターアーキテクトはPickard Chilton。地上45階、高さ約240m。同等の超高層が駅前に別に2棟計画されている。他の地区と比較すると動きが目立たなかったが、隣の八重洲1丁目地区(東地区)が本格的に動き出している(21年8月撮影)(写真:日経クロステック)
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 新型コロナウイルスの感染拡大、および五輪・パラリンピックの延期と限定的な開催が、2010年代の都市開発と、今後の都市開発の間にどのような分水嶺をつくるのか、まだ先は分からない。

 そもそも、国家戦略特区の制度の下で進むプロジェクト群には、これから開発本番になるものも多い。意外なほど、完成に至ったものは一握りしかない。

港区内の国家戦略特区認定区域および事業。内閣府が公表している「国家戦略特区の認定状況」および「国家戦略特別区域会議」配布資料を基に、東京都都市整備局の発表情報、事業者による公式リリース情報などを反映させている。着工・竣工(予定)は当初提案時から変更されている場合が多い。複数街区で構成される場合は最終完成年度を記しているので、それ以前に一部が竣工している場合もある。グレー部分は竣工済み、オレンジ部分は認定前の提案段階のプロジェクト(以下の表・同)(資料:公表情報を基に日経クロステックが作成)
港区内の国家戦略特区認定区域および事業。内閣府が公表している「国家戦略特区の認定状況」および「国家戦略特別区域会議」配布資料を基に、東京都都市整備局の発表情報、事業者による公式リリース情報などを反映させている。着工・竣工(予定)は当初提案時から変更されている場合が多い。複数街区で構成される場合は最終完成年度を記しているので、それ以前に一部が竣工している場合もある。グレー部分は竣工済み、オレンジ部分は認定前の提案段階のプロジェクト(以下の表・同)(資料:公表情報を基に日経クロステックが作成)
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 認定を受けるための事業者からの計画提案は、内閣府の公表資料を見る限りでは、19年は3件、20年は4件。勢いのあった15年の9件、17年の8件などに比較するとスローダウンを感じさせた(いずれも再提案=計画変更の件数を含む)。

 しかし、21年は既に、6月の「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回で5件、8月の同第20回で2件と巻き返している。「帝国ホテル 東京」などを建て替える、当面の都心最大級の再開発とされる「内幸町1丁目街区」(内幸町1丁目北特定街区)などを含む。

内幸町1丁目街区
内幸町1丁目街区
内幸町1丁目街区(内幸町1丁目北特定街区)の完成イメージ。計画提案者はNTT都市開発、中央日本土地建物、三井不動産(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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内幸町1丁街区および隣接する日比谷公園を対象とする「駅・まち・公園一体」の都市基盤整備イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
内幸町1丁街区および隣接する日比谷公園を対象とする「駅・まち・公園一体」の都市基盤整備イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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 以下に、都市再生関連の国家戦略特区認定区域の概要を整理し、気になるプロジェクトをピックアップしてみた。

 「アベノミクス成長戦略」実現のために制定したと説明される国家戦略特区の制度は、都市開発の場面で今後良好に機能し得るのか。都市開発の規模とスピードの在り方に再考の余地はないのか。事業者や行政が時代の変化を読み取りながら作成しているはずの計画提案書に、何らかの予兆は表れてくるだろうか。

 そもそも、認定に先立って公表される計画提案が、よりオープンかつ小刻みに検証・評価されるサイクルを持ち、異なる計画間のすり合わせが起こりやすくなってもいいのではないか(もちろんデジタル)。個別最適化に陥りがちなプロジェクト主義から脱し、総合力で東京の魅力を高めるための手法があり得るはずだ。

港区:虎ノ門の仕上げが急ピッチで進み、赤坂に最新プロジェクトも

赤坂2・6丁目地区開発計画
赤坂2・6丁目地区開発計画
赤坂2・6丁目地区開発計画の完成イメージ。計画提案者は三菱地所、TBSホールディングス。既存地区と一体の「赤坂エンタテインメント・シティ構想」が発表されている(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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赤坂2・6丁目地区開発計画における「駅・まち」を一体的につなぐ空間のイメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
赤坂2・6丁目地区開発計画における「駅・まち」を一体的につなぐ空間のイメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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浜松町2丁目4地区
浜松町2丁目4地区
浜松町2丁目4地区の完成イメージ。計画提案者は世界貿易センタービルディング、東京モノレール、JR東日本、鹿島(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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浜松町2丁目4地区の断面イメージおよび平面イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
浜松町2丁目4地区の断面イメージおよび平面イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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品川開発プロジェクト
品川開発プロジェクト
品川開発プロジェクトの計画イメージ。計画提案者はJR東日本。敷地内から発見された高輪築堤(鉄道構造物)の保存とまちづくりの両立を図るため、都市計画変更が提案されている(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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品川開発プロジェクトの3街区部分における築堤保存イメージ。建物位置を変更する(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
品川開発プロジェクトの3街区部分における築堤保存イメージ。建物位置を変更する(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第19回、21年6月29日配布資料より抜粋)
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中央区・千代田区:日本橋川沿いの開発出そろい、八重洲も本格化

中央区内および千代田区内の国家戦略特区認定区域および事業(資料:公表情報を基に日経クロステックが作成)
中央区内および千代田区内の国家戦略特区認定区域および事業(資料:公表情報を基に日経クロステックが作成)
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日本橋1丁目中地区再開発
日本橋1丁目中地区再開発
日本橋1丁目中地区再開発の完成イメージ。計画提案者は三井不動産、野村不動産。C街区の超高層は地上51階、高さ約287m(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第12回、17年8月14日配布資料より抜粋)
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日本橋1丁目中地区再開発の位置図(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第12回、17年8月14日配布資料より抜粋)
日本橋1丁目中地区再開発の位置図(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第12回、17年8月14日配布資料より抜粋)
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既存建物の解体が始まる直前の日本橋1丁目中地区(北西側)(20年10月撮影)(写真:日経クロステック)
既存建物の解体が始まる直前の日本橋1丁目中地区(北西側)(20年10月撮影)(写真:日経クロステック)
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日本橋室町1丁目地区再開発
日本橋室町1丁目地区再開発
日本橋室町1丁目地区再開発の完成イメージ。計画提案者は三井不動産。A街区の超高層は地上36階、高さ約180m(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第15回、19年4月23日配布資料より抜粋)
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日本橋室町1丁目地区再開発の地上平面イメージ、および日本橋川対岸からの計画建物イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第15回、19年4月23日配布資料より抜粋)
日本橋室町1丁目地区再開発の地上平面イメージ、および日本橋川対岸からの計画建物イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第15回、19年4月23日配布資料より抜粋)
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日本橋1丁目東地区再開発
日本橋1丁目東地区再開発
日本橋1丁目東地区再開発の完成イメージ。計画提案者は東急不動産、三井不動産、日鉄興和不動産。A街区の超高層は地上40階、高さ約240m(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第20回、21年8月16日配布資料より抜粋
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日本橋1丁目東地区再開発の配置図。立体道路制度を活用して首都高道路用地を確保し、上部空間に約2200m2の広場を整備する(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第20回、21年8月16日配布資料より抜粋)
日本橋1丁目東地区再開発の配置図。立体道路制度を活用して首都高道路用地を確保し、上部空間に約2200m2の広場を整備する(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第20回、21年8月16日配布資料より抜粋)
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KABUTO ONE
KABUTO ONE
部分竣工に至り、21年8月に開業(仮使用開始)した「KABUTO ONE」(日本橋兜町・茅場町1丁目地区)。事業者は平和不動産、山種不動産、ちばぎん証券、設計者は三菱地所設計(意匠、設備)、大林組(構造)、施工者は大林組(写真:平和不動産)
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内神田1丁目計画
内神田1丁目計画
内神田1丁目計画の完成イメージ。計画提案者は三菱地所(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第16回、19年12月17日配布資料より抜粋)
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内神田1丁目計画における日本橋川に顔を向けた水辺広場の整備イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第16回、19年12月17日配布資料より抜粋)
内神田1丁目計画における日本橋川に顔を向けた水辺広場の整備イメージ(資料:首相官邸ホームページ「国家戦略特別区域会議東京都都市再生分科会」第16回、19年12月17日配布資料より抜粋)
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