韓国Samsung Electronics(サムスン電子)などが中国・華為技術(ファーウェイ)への半導体供給を停止すると報じられた。米国で2020年9月15日から施行される新たな禁輸措置に従った形だ。日本企業にとっても対岸の火事ではない。
従来の禁輸措置では、ファーウェイが独自に設計したプロセッサーやベースバンドICが主な規制対象だった。新たな禁輸措置では、米国由来のEDA(Electronic Design Automation)ツールや製造装置を利用している汎用半導体も規制対象になる。そのため、Samsung Electronicsや韓国SK hynix(SKハイニックス)はメモリー半導体などの供給を停止するという。さらに、韓国Samsung Display(サムスンディスプレー)や韓国LG Display(LGディスプレー)のスマートフォン用パネルについても、関連する半導体が規制対象に該当することから、やはり供給を停止するもようだ。

汎用半導体が規制対象に追加された影響は大きい。20年8月17日に米商務省が新たな禁輸規制を発表した直後、お膝元のSemiconductor Industry Association(SIA、米国半導体工業会)が「半導体販売への広範な規制は米国半導体産業に混乱をもたらす」「米国企業への弊害を抑えつつ国家安全保障上の目標を達成するために限定的なアプローチを取ってきた政府が突如として方針を転換したことに驚きと懸念を抱いている」といった旨のコメントを発表したほどだ。米国政府はそれを承知で、肉(自国産業)を切らせて骨(ファーウェイをはじめとする中国のハイテク産業)を断とうとしているのだろう。
一連の報道で筆者が連想したのは、Samsung Electronicsが米Verizon Communications(ベライゾン・コミュニケーションズ)から5G(第5世代移動通信システム)用基地局を受注したことである。受注額は無線関連だけで約7兆9000億ウォン(約7000億円)、提供期間は20年6月末~25年末と、非常に大型の契約だ。代わりに、これまでVerizonに基地局を提供してきたフィンランドNokia(ノキア)がその座を追われることになるという。
Nokiaは、スウェーデンEricsson(エリクソン)と共に米国の通信業界に欠かせない通信機器ベンダーという認識だっただけに、Samsung ElectronicsとVerizonの契約は個人的に意外だった。Verizonは5Gにおいてカバーエリアの狭さから劣勢に立たされており、Samsung Electronicsとの契約は巻き返しに向けた極めて合理的な決定という可能性は十分にある。