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 全国で老朽化が進む橋やトンネルの問題に、市民や企業は参画しづらい──。国が手掛けるインフラのデータベースを取材していてそう感じた。維持管理を担う自治体や研究者だけでなく、建設業界の外の民間企業や専門家にとってデータにアクセスしづらい状況を目の当たりにしたからだ。

 国土交通省道路局は全国の道路施設の点検データを「全国道路施設点検データベース」としてまとめている。2022年7月に、従来提供していた施設名や管理者名などのデータに加え、詳細な点検データの公開を始めた。

 例えば橋の場合、部材ごとにひび割れや破断、表面のはく落といった損傷状況の説明や写真、点検の時系列記録を掲載する。国や自治体が管理する全国の道路橋を約72万件、トンネルを約1万1000件扱うなど、その数は膨大だ。国交省道路局は「研究機関や民間企業などによる技術開発の促進や、維持管理の効率化や高度化を目指す」と説明する。

国土交通省道路局が公開する全国の道路施設における点検データ。道路橋は約72万件に上る(出所:国土交通省)
国土交通省道路局が公開する全国の道路施設における点検データ。道路橋は約72万件に上る(出所:国土交通省)
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 問題は、このデータの閲覧に安くない費用がかかることだ。データベースの整理や運営を担う日本みち研究所によると、個人や大学、民間企業などが利用する場合は道路橋で年間20万9000円、トンネルでは年間5万5000円かかる。橋やトンネルの他、道路標識などの道路付属物、舗装などデータの種類によって別々に料金が発生する仕組みだ。

道路施設に関する詳細な点検データは、自治体などが自ら記録したデータ以外全て有料だ(出所:国土交通省)
道路施設に関する詳細な点検データは、自治体などが自ら記録したデータ以外全て有料だ(出所:国土交通省)
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 有料データの存在は、国が17年にまとめた「オープンデータ基本方針」で示す「行政が保有するデータは基本的に無料」との考え方にそぐわない。オープンデータとは、誰もが二次利用できるデータのことだ。11年に起こった東日本大震災では電力供給の情報や避難所の情報などが官民で流通し、防災対応の面で効果を上げた。これをきっかけに、国はオープンデータの整備に力を入れ始めた。

オープンデータ基本方針では、国が保有するデータは公開することを掲げている(出所:当時の内閣官房情報通信技術総合戦略室)
オープンデータ基本方針では、国が保有するデータは公開することを掲げている(出所:当時の内閣官房情報通信技術総合戦略室)
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 何のために道路構造物の点検データの利用料金を設けているのか。国交省道路局に理由を問い合わせた。