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 静岡県浜松市が日本歴代最高気温タイとなる41.1℃を記録するなど、2020年の夏も暑かった。厳猛暑が続く中、ここ数年、市場が急成長しているのがウエアラブルの暑熱対策製品である。2019年の夏に手持ち式ファンがブームとなったが、2020年夏はソニーや富士通ゼネラルといった大手メーカーも参入し、高度な製品が多数登場した。

 2020年の暑熱対策製品のトレンドは、大きく2つある。直流電流を流すと片面が吸熱(冷却)し、もう片面が放熱(加熱)する「ペルチェ素子」を利用したペルチェ式デバイスと、従来は主に建設業や警備業の作業服として使われていた「電動ファン付きウエア」だ。前者は、冷えたペルチェ素子を頸(けい)動脈や首の後ろに接触させて冷やす製品で、ソニーの「REON POCKET」や富士通ゼネラルの「Cómodo gear」が代表格である。後者は服に取り付けた専用ファンが回転して、服の内側に外気を取り込んで背中から首、両袖の方向に気流を発生させる仕組み。2020年からアイリスオーヤマやアシックスが参入し、一般ユーザー向けのラインアップが増えた。

 2020年夏の暑熱対策製品の売れ行きは好調だった。ペルチェ式デバイスである「ネッククーラーNeo」を開発したサンコーの広報担当者によると、2019年の同シリーズの累計出荷台数が1万8000台だったのに対し、2020年は少なくとも20万台を超えたそうだ。

サンコーの「ネッククーラーNeo」
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サンコーの「ネッククーラーNeo」
2枚のペルチェ素子が左右の頸動脈を冷やす。バッテリーは別売り。発売時の価格は5436円(税抜き)。(写真:スタジオキャスパー)

 ところが、メーカーの開発担当者の顔は明るくない。本当に、今後も売れるのか自信がないのだ。中でも各社が頭を悩ませているのは製品の「見た目」である。

 電動ファン付きウエアは、衣服内に空気を取り込むという性質上、ファンを回すと上半身が着ぐるみのように膨らむ。作業現場では、さまつなことだが、街中で膨らんだ服を着ることに抵抗を感じる人は多いだろう。

 アイリスオーヤマの電動ファン付きウエア「クールウェア」を開発した、家電開発部 季節家電夏チームマネージャーの福増一人氏も、製品の外観に課題を感じている。「膨らんでいても涼しい方がいいと思う人が使うだろう」(同氏)と話す。ただし、「2021年以降のモデルでは一般の人が気軽に着られるデザインを検討する」(同氏)など、改善に意欲を見せる。だが、そもそも服の内部に空気を取り込んで涼感を得るのが冷却原理のため、一定の膨らみは避けられない。

アイリスオーヤマの「クールウェア」
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アイリスオーヤマの「クールウェア」
同社のヒット商品である卓上扇風機「サーキュレーター」の開発チームが、専用ファンのプロペラの設計に携わった。ファンの薄型化と静音性を実現。発売時の価格は1万8560円(税抜き、ウエア+ファン+バッテリー)。(写真:アイリスオーヤマ)