東京マラソン財団は2021年9月17日、1カ月後の10月17日に開催予定だった「東京マラソン2021」を2022年3月6日に延期すると発表した。東京マラソンは強豪選手も参加するワールドマラソンメジャーズと呼ばれる世界の主要マラソン大会の1つであり、都内の名所を巡るそのコースは市民ランナーにとって一度は参加したいあこがれの大会でもある。ただし、その出走のハードルは高い。人気のため定員以上の応募があり、参加はいつも抽選だ。
前回の東京マラソン2020(最終的に縮小開催となった)の場合、定員とエントリー数から計算すると東京都民限定の都民エントリーの倍率は約32.76倍、一般エントリーは約11.12倍と狭き門だった。執筆時点で東京マラソン2021のエントリー数などは公表されていないが、落選の声を多く聞いたことからそれなりに倍率は高かったようだ。
そんな中、筆者は見事当選。それも都民エントリーという一般エントリーよりさらに狭き門だと思われる当選とあって、ふがいない結果を残さないためにも10月だった大会当日に向けて夜な夜な走り込んでいた。そんな矢先の延期の知らせである。走り込みの日はまだ続く。
実はこうして延期となったり、中止したりしたマラソン大会は東京マラソンだけではない。2020年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、国内の多くの大会、それも歴史ある大会から第1回の記念すべき開催となるはずだった大会まで、中止や延期を余儀なくされた。このまま大会が消えてしまうのではないか――。筆者自身、自らエントリーしていた大会の返金手続きや宿泊施設の予約キャンセルなどをしながら不安を抱いたものだった。
そんな状況に一条の光をさすどころか、マラソン大会の在り方を変え、新しいランニングイベントを創り出し、走ることに新たな価値を与え続けているアプリがある。大会・イベントの企画運営やランニング情報の発信を手掛けるアールビーズ(東京・渋谷)が開発・提供する「TATTA(タッタ)」というアプリだ。
TATTAは5年前の2016年にリリースされたアプリで、当初は数あるランニング計測アプリの1つだった。だが今や「オンラインマラソン」の立役者といっても過言ではないアプリになっている。オンラインマラソンは、スマートフォンなどが搭載する加速度・角速度センサーのデータや、GPS(全地球測位システム)による位置情報データを計測アプリが取得し、走った距離やタイムを競う大会だ。
オンラインマラソンと一口にいっても様々な形態がある。走る場所は問わないものの決められた日時にスタートして一定の距離を走り切ってタイムを競うものから、ある一定期間に決められた距離を走り切る、あるいは合計距離がどれだけ長いかを競うものまで様々だ。共通するのは結果を測定し、オンラインで順位などを確認する点だ。
TATTAは測定結果とこうした大会をつなぐアプリであり、新型コロナウイルス禍でその存在感を増した。2020年2月時点のダウンロード数は約14万だったが、コロナ禍の2021年7月時点では3倍強の約44万にまでその数を伸ばしている。