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 コロナ禍で大手企業を中心として一気に定着した観のあるテレワーク――。ただし在宅勤務の生産性は、同居する家族構成や作業環境の充実度によっても変わる。ジンズ子会社で個人向けワークスペース事業を手掛けるThink Lab(シンクラボ)の調べによると、「3~8歳くらいの子どもがいる世帯で作業環境が不十分である場合、集中度合いが最も低かった」という。気分転換を兼ねて近所のカフェに行っても、混んでいて席が取れないのはままあることだ。

 こうした場合、頼りになるのが在宅勤務や職場の代替スペースとなる「シェアオフィス」だ。不動産開発会社などが提供し、個人用作業スペースのほか、会議室や電話用ブースなどを備える。

 シェアオフィスは「サードプレイス(第3の場所)」とも呼ばれる。サードプレイスは、米国の社会学者レイ・オルデンバーグ(Ray Oldenburg)が「交流が生まれる場所」として唱えた概念だが、現在は職場と自宅以外で仕事をする場所の総称として使われることが多い。今回は、コロナ禍が引き起こした企業のオフィス再編の要素として注目されるサードプレイスの動向を考察する。

 企業によるサードプレイスの導入を巡っては「都心部のタッチダウン型や郊外型のシェアオフィスに顕著な需要がある」(ザイマックス不動産総合研究所の中山善夫社長)。タッチダウン型とは外出が多い従業員が立ち寄れる都心部の拠点、郊外型とは住宅地に近い郊外の拠点を指す。企業はシェアオフィス事業者と契約し、これらの拠点を使えるようにすることで、従業員の生産性や満足度が高まることを期待する。

サードプレイス(シェアオフィス)を活用したオフィス再編のイメージ。本社オフィスからの距離に着目してまとめた。図中の駅名は例示
サードプレイス(シェアオフィス)を活用したオフィス再編のイメージ。本社オフィスからの距離に着目してまとめた。図中の駅名は例示
(各社の取材を基に日経クロステックが作成)
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オフィス再編にサードプレイスを活用

 オフィスの再編にもサードプレイスは活用されている。2020年9月末から「東京ポートシティ竹芝」のオフィスタワーに本社を移転するソフトバンクは出社率50%を想定。在宅勤務に加えて、シェアオフィス「WeWork」の国内拠点の共用エリアを使えるようにする。またPayPayは9月下旬、東京オフィスをWeWork内に移転する。出社率を25%とし、10月下旬からサテライトオフィスを東京都心などに8カ所設け、同時にWeWorkの国内拠点(共用エリア)を利用する。

 2019年10月にオフィスを分散型に再編して本社オフィスを6割削減し、横浜や浦和、船橋など1都3県の7カ所にサテライトオフィスを構えたNECネッツエスアイ。同社は営業担当者向けに、三井不動産の「ワークスタイリング」やザイマックスの「ジザイ」など4社のシェアオフィスを契約している。「拠点の立地や、個室の有無など設備の違いによって使い分けている」(同社)

 シェアオフィスの利点は、従来の不動産賃貸借契約と比べて柔軟に利用できることにある。最低利用期間が短く、共用エリアを使う場合は利用月の登録会員数や、実際に利用した時間数などで課金する料金体系が主流だ。そのため、必要なときに必要なだけ使う「アズ・ア・サービス」として利用できる。