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 全国で2万5000ヘクタールを超える浸水被害をもたらした2019年10月の東日本台風(台風19号)。この台風で浸水した川崎市市民ミュージアムでは、建物の復旧などができないまま、1年が経過しようとしている。川崎市は、屋上防水や外壁改修のほか、受変電設備や中央監視システムなどを従来通り地下に復旧するだけでも約25億8000万円がかかると試算している。この額には浸水対策費用を含んでいない。

左は東日本台風の影響で浸水した川崎市市民ミュージアムの地下1階にある駐車場入り口、右は荷解き梱包室の排水後の様子。荷解き梱包室は、地下駐車場との間に設けられたシャッターが水圧で破壊された後に浸水し、床から3m超まで水に漬かった(写真:川崎市)
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左は東日本台風の影響で浸水した川崎市市民ミュージアムの地下1階にある駐車場入り口、右は荷解き梱包室の排水後の様子。荷解き梱包室は、地下駐車場との間に設けられたシャッターが水圧で破壊された後に浸水し、床から3m超まで水に漬かった(写真:川崎市)
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左は東日本台風の影響で浸水した川崎市市民ミュージアムの地下1階にある駐車場入り口、右は荷解き梱包室の排水後の様子。荷解き梱包室は、地下駐車場との間に設けられたシャッターが水圧で破壊された後に浸水し、床から3m超まで水に漬かった(写真:川崎市)

 川崎市中原区の等々力緑地に立つ川崎市市民ミュージアムは、建築家の菊竹清訓氏が設計を手掛けたことで知られる。建物は地下1階・地上3階建てで、構造種別は鉄骨鉄筋コンクリート造。延べ面積は1万9542m2だ。総工費約150億円を投じ、博物館と美術館の複合文化施設として1988年に開館した。

 等々力緑地では、東日本台風がもたらした大雨の影響で内水氾濫が発生。市民ミュージアムでは地下の電気設備や収蔵庫などが浸水し、収蔵品約26万点のうち約22万9000点が被害を受けた。市は浸水の10日後から収蔵品の「レスキュー作業」に取りかかったが、数が多いため、紙の資料や絵画などの修復が完了する時期は見えていない。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、専門家に修復を依頼できない時期が生じたため、作業が想定よりも遅れている。

 壊滅的な被害を受けた市民ミュージアムの今後の在り方を検討するため、市は20年7月28日、川崎市文化芸術振興会議に検討部会を設置し、課題の整理などを始めた。事務局を務める同市の市民文化振興室は、「21年8月ごろをめどに『在り方』の方針案を公表し、意見を公募する予定だ。21年10月までに方針を作成したい」としている。

 市民文化振興室は「既存施設の解体を前提とした議論ではない」と強調するが、施設は以前から老朽化が問題になっており、浸水被害からの復旧がままならない状況であることや、浸水対策には多額の費用を要することなども考えると、その存続は危機的状況にあると言えそうだ。

 既存施設を使い続けるには、今後も同様の被害を出さないよう、浸水対策が欠かせない。敷地は多摩川の洪水で最大10mの浸水が想定されているからだ。市民ミュージアムは2階天井まで水に漬かることになるため、収蔵庫や機械室などを3階に移設しなければならない。しかし、市の検討によると3階床の耐荷重は不足しており、収蔵庫などを3階に移設するのは困難だ。