だいぶ前から、家庭やオフィスで使われているコードレス電話。そのコードレス電話の通信技術を推す人々が、2018年夏から周知活動を大幅に強化している。しかも、ぜひ知ってほしいポイントの1つはIoT対応だという。

 このコードレス電話技術の名はDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)。1992年にETSI(欧州電気通信標準化機構)でコードレス電話用に規格化され、中国やインドなど未導入のところもあるが世界の広範にわたるエリアで使われている。日本では2010年から使えるようになった。1.9GHz帯を使用し、屋外300m、屋内70mといった広さをカバーする。通信速度は使用する変調方式によって違ってくるが、最も基本的な変調方式だと最大1.152Mビット/秒(理論値)になる。音声のほか映像の伝送も可能だ。

 コードレス電話のメーカーや通信事業者などで組織する「DECT Forum」が普及拡大などに向けた活動をしている。日本国内では、同フォーラムのジャパンワーキンググループが周知や普及に向けた活動を展開している。

 日本のDECT対応機器の出荷台数は増加しており、総務省の調査によると累計で2000万台以上だという。例えばパナソニックのコードレス電話のカタログを見ると、「1.9GHz DECT準拠方式」という記述が見つかる。日本ではかなりの台数が使われた(使われている)という実績があるのだ。

パナソニックWebサイトに掲載されたコードレスホンの製品情報。「J-DECT」のマークがDECT準拠製品であることを表す
パナソニックWebサイトに掲載されたコードレスホンの製品情報。「J-DECT」のマークがDECT準拠製品であることを表す
(出所:パナソニック)
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 一方で、DECTには低消費電力のULE(Ultra Low Energy)というIoT向け拡張仕様があることはあまり知られていない。ULEの使用周波数帯やカバーエリアの広さなどはDECTと同じだ。IoT向け通信技術として、カバーエリアは近距離向けのBluetoothやZigbeeより明らかに広く、Wi-Fiよりも少し広く、キロメーターレベルで電波が飛ぶLPWAよりは明らかに狭いという独特な立ち位置にある。

 この2~3年、よく使われる通信技術のIoT対応が目立つ。LTEをベースにしたLTE-MやNB-IoT、BluetoothをベースにしたBluetooth meshなどが注目されている。さらにIoT専用であるLoRaWANやSigfoxといった新興の技術もある。それだけIoTが大きな市場だということであり、コードレス電話の技術であるDECTがIoTに向かうのも不思議ではない。

 日本で出ているULE対応製品もある。例えばパナソニックのワイヤレステレビドアホンが対応している。この製品の子機は、エネループハイエンドモデル6本で最大24カ月使えるという。ただし対応製品はDECTに比べると少なく、日本で使えるものとなるとさらに限られる。

 ULEには、普及促進を図るULE Allianceという組織があるが、日本に支部などはなくDECT Forumジャパンワーキンググループが周知活動を受け持っている。IoT向け技術が群雄割拠状態の中で多数のULE製品を普及させるには、周知はもちろん、早く機器メーカーにこの技術のメリットまで理解してもらう必要があるように思う。