「こんにちは。どうされましたか」「これからスカイツリーへ行きたいんですけど、行き方が分からなくて」――。
2019年8月末、羽田空港第2ターミナルの到着ロビー。こんな会話が交わされていた脇には、3つの大きなボタンがついた見慣れぬキオスク端末が置かれていた。これは、全日本空輸(ANA)と一般社団法人PLAYERSが到着客向けの実証実験の一環として設置したヘルプボタンだ。
正式名称は「優しい空港サポートボタン」。3つのボタンは助けてほしい内容に応じ「電車・バスの乗り換え」「荷物運び」「(その他の)お困り」と割り振られている。到着客がいずれかのボタンを押すと、あらかじめボランティア登録した空港勤務のスタッフに通知が届き、近隣に居合わせたスタッフがボランティアとして手伝う。出発ロビーと異なり到着ロビーは航空会社の空港スタッフがあまり多くなく、かといって近隣のレストランや物販店の人に声をかけるのも気が引ける。そんな状況で心細く思っている到着客にはありがたい存在だろう。
実はこの実証実験、ITツールが縁の下の力持ちとして活躍している。キオスク端末の中にはボードコンピューターの「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」が入っており、ボタンやデジタルサイネージの表示を制御している。ボタンが押された旨は、無線LANとインターネットを介してチャットアプリ「LINE」のサーバーで稼働するチャットボットに届き、空港勤務のボランティアたちのLINEグループに同報。ボランティアの誰かがLINEのアプリ画面で対応する旨の返信ボタンを押すと、それがチャットボットからラズパイへと伝わり、キオスク端末の画面にボランティアが向かっていることが表示される。