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 「DX(デジタルトランスフォーメーション)銘柄2022」に選ばれた企業に、取り組み内容や組織体制などを中心に取材した。多くの企業がDXに取り組む中、取材を進めるうちに選定企業の多くはDXプロジェクトに取り組む現場を組織的に支援する体制が整っていることに気が付いた。

 アクセンチュアの植野蘭子ビジネス コンサルティング本部人材・組織プラクティス日本統括マネジング・ディレクターは「DXの実現には全社的な視点に加えて、組織的な支援が欠かせない」と指摘する。デロイト トーマツ グループの小川貴弘パートナーも「(事業部門を横断して支援する)横串機能をもつ組織をつくり、ノウハウをためていくのが望ましい」と口をそろえる。

 具体的にはDXプロジェクトを一元的に管理し、全社で共通のデジタル基盤を整備したり社内の好事例を共有したりする取り組みが必要だ。DX銘柄に選ばれた企業は、事業部ごとにリーダーを設置したうえで、「DX推進部」のような全社のDXプロジェクトを取りまとめる組織と協力する体制を整える企業が多い。

 一方でこれまで多くの企業が取り組んできた「ITによる業務改善」のやり方を踏襲しても、DXの実現は難しい。社内からデジタル活用のアイデアをボトムアップで募り、パイロット部署で試験的に実践する。パイロット部署である程度成果が出たら全社に展開するというフローだが、全社展開の段階で事業部によって進展度合いに差が生じて四苦八苦している企業が多く見受けられる。

 パイロット部署にはやる気のある人材や予算をつぎ込めるため、他の部署と環境が違うことが理由の1つ。より根本的な問題は、DXと従来の業務改善は本質が異なることだろう。ボトムアップの業務改善は個別最適に陥りやすく、従業員ごとの周辺業務の改善を目的としがちだった。本来のDXは全社的に業務を改革する全体最適を目的とすべきで、個別最適の総和が全体最適になるとは限らない。

 AI(人工知能)の登場による影響も大きい。AIは学習を重ねればこれまで人が担当していた業務を肩代わりするポテンシャルを秘めている。自分の業務しか知らない現場によるボトムアップでは、AIによる全社最適を実現するアイデアは生まれにくい。業務を俯瞰(ふかん)的にみられる経営層によるトップダウンの意思決定が不可欠だ。