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 いま、本業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を真正面から考え、そして導入していかないと、企業として生き残っていけないのではないか。

 コロナ・ショックがあったにもかかわらず「テレワーク環境の整備に取り組まない」という姿勢の企業に対し疑問符が付くことは、かなりの企業が理解しているはずだ。さらに「本業DXに取り組まない企業は、競合他社に置いていかれ、淘汰されてしまう」というのが記者の考えだ。新型コロナ禍における企業の技術活用を取材して、その認識を強めている。

 ここで言う本業DXとは、その企業の主要事業におけるDXを指す。AI(人工知能)を使って人手不足を補ったり、顧客とのチャネルとして新たにSNS(交流サイト)やビデオ会議システムを活用したりする。今回は話を単純にするために、BtoCのビジネス形態をメインとする企業に絞って取り上げる。

 「新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの企業はテレワークなど、いわゆる対処策の取り組みを進めているが、本質的なDXはなかなか進められていない」とPwCあらた有限責任監査法人のシステム・プロセス・アシュアランス部の宮村和谷パートナーは分析する。同氏は事業継続管理やITリスク管理などが専門で、事業継続の観点から、全社的な重要業務のデジタル化に取り組む必要があると話す。

ドローンやAI活用で保険金支払いを迅速に

 本業DXは新型コロナの感染拡大の状況が悪化したり、災害が発生したりしても、顧客にサービス提供を続けられるかどうかを左右する。

 大規模災害発生時、大手損害保険会社が保険金支払いにデジタルを活用する例を見てみよう。大手損保会社4社は被害状況の推測や顧客からの事故受け付け、損害の査定といった災害発生からの一連のプロセスにAIやSNSを活用している。首都直下型地震や荒川の氾濫といった、被害件数が膨大になると推定されている災害が起きた際の深刻な人手不足を補い、顧客への保険金支払いを迅速にする狙いだ。

 MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、東大発数学ベンチャーと組み、ドローンとAIを使った損害査定システムを令和2年(2020年)7月豪雨の際に実運用した。

 ドローンから撮影した画像を基に作製した地表の3次元モデルに、AIや流体シミュレーションを使い、顧客の建物の浸水高を推定する。人による立ち会い調査を一軒一軒実施せずとも、建物の浸水被害状況を把握できるようにする。例えばこれまで事故の連絡から保険金支払いまで約1カ月かかっていた顧客の場合、最短5日程度で支払えるようになると見込む。

 損害保険ジャパンはコミュニケーションツールのLINEやAIを活用し、地震や水災といった広域災害発生時の顧客からの事故連絡や損害査定において、顧客の利便性を高めるプロジェクトを進めている。連絡から査定まで、LINEで完結する災害時対応システムなどの導入を急ぐ。

 東京海上日動火災保険は人工衛星画像などをクラウド上でAIを使い分析。水災が発生した際に、地図上に各地点での浸水高の推定値を色分けでプロットして可視化し、支払いの対象になるかならないかの判定に役立てている。被害状況を俯瞰(ふかん)的にいち早く把握するのに、デジタルを駆使している。