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 「せっかくなので、撃ってみませんか」――。

 突然、物騒な提案をいただいた。動揺した筆者はとっさに、横にいた新人記者に話を振った。「やってみたら。いい経験になるよ」。釈然としない新人記者の表情は見なかったことにした。先方のレクチャーを受けて引き金を引いた彼は、水しぶきを浴びていた。

 そこでふと思った。このご時世、パワハラ(パワーハラスメント)だと言われたらどうしよう、と。先輩という立場を利用したのは間違いない。変化のスピードが速い時代を生き抜かねば。「せっかくなので私も……」と引き金を引くことにした。

 実はこれ、自動車部品の信頼性を評価する試験である(図1)。具体的にいうと、高圧をかけた水を噴射して部品が壊れないかを確かめる「加圧強噴流試験」だ。2.5~3m先にある試験体に向けて、水圧を約1000kPaまで高めた水を毎分75Lものの流量で噴射する。踏ん張っていないと、体がぐらついてしまうほどの勢いだった。

図1 自動車部品の信頼性を評価する試験を体験
図1 自動車部品の信頼性を評価する試験を体験
高圧をかけた水を噴射して部品が壊れないかを確かめる「加圧強噴流試験」の様子。(撮影:日経Automotive)
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 試験で想定するのは、高圧洗浄機などで洗車するとき。最近ではカメラやミリ波レーダー、そして自動運転車への搭載が進む見込みのLIDAR(3次元レーザーレーダー)といったセンサーの信頼性を評価するニーズが増えているようだ。高圧洗浄機に負けない強さが要る。

 筆者と新人記者が加圧強噴流試験を体験したのは、OKIエンジニアリングが埼玉県本庄市に持つ車載電子機器・装置向けの試験サービス拠点「カーエレクトロニクステストラボ」である。次世代車両の実用化に向けて、自動車メーカーや部品メーカーが研究中の新技術や量産前の部品を持ち込んで性能・信頼性を評価する開発の最前線現場だ。

埼玉県本庄市にあった部品メーカーの駆け込み寺

 「新型コロナウイルスの影響でいったんは立ち止まるかに見えたが、『CASE』関連や次世代パワートレーンの開発は続いており、試験の引き合いは強い」。こう語るのは、同社社長の橋本雅明氏。旺盛な試験ニーズに対応するため、同社は自動車関連事業への投資額として2020~22年度の3年間で18億円を計画する。直前の17~19年度と比べると、投資額を1.5倍に増やす強気の戦略だ。

 試験ニーズを拡大させる要因はCASE対応だけではない。部品メーカーが対応を迫られているのが「脱ケイレツ」である。自動車メーカーは部品調達網を再編し、ケイレツ(系列)を超えた部品メーカーからの調達を増やしている。

 OKIエンジニアリングの本庄拠点は今、ホンダや日産自動車、SUBARU(スバル)といった、関東に本社を置く自動車メーカーとケイレツ関係にあった部品メーカーを中心に、顧客の新規開拓を目指す企業の駆け込み寺になりつつある。