「乗ると疲れるヒコーキ」を「乗ると元気になるヒコーキ」へ。そんなイノベーションにデジタルの力で挑もうとしている人がいる。全日本空輸(ANA)やPeach Aviation(ピーチ)、バニラ・エアなどの持ち株会社であるANAホールディングスのデジタルイノベーション組織、デジタル・デザイン・ラボ(DDラボ)に所属する小野沢綾花イノベーション・リサーチャーだ。

「乗ると元気になるヒコーキ」を企画する、ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボの小野沢綾花イノベーション・リサーチャー
「乗ると元気になるヒコーキ」を企画する、ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボの小野沢綾花イノベーション・リサーチャー
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時差ボケ軽減、アプリでアドバイス

 プロジェクトの第1弾として小野沢氏が現在取り組んでいるのが時差ボケ対策アプリの開発だ。出張や旅行で国際線の航空便に乗り欧米などへ行くと、程度に個人差はあるものの大半の人は時差ボケになってしまう。現地に到着後、夜になってもなかなか寝付けなかったり、逆に昼間に強い眠気が襲ってきたりした経験のある人は多いだろう。

開発中の時差ボケ対策アプリの画面。出発地と到着地の時差を踏まえ、出発3日前から食事(黄色いアイコン)や就寝(灰色のアイコン)のタイミングを調整するよう促す
開発中の時差ボケ対策アプリの画面。出発地と到着地の時差を踏まえ、出発3日前から食事(黄色いアイコン)や就寝(灰色のアイコン)のタイミングを調整するよう促す
(出所:ANAホールディングス)
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 時差ボケ対策アプリはそうした時差ボケを軽減するためのアドバイスを、スマホの画面で見られるようにしたものだ。搭乗予定のANA便を登録しておくと、出発地と到着地の時差を踏まえて搭乗3日前から食事と就寝の時間を少しずつずらすようアドバイスしてくれる。

 さらにANA便への搭乗当日は、搭乗前の食事の摂り方、機内での過ごし方、現地到着後の食事や睡眠のタイミングなどについてさらに詳細なアドバイスを表示してくれる。

 この時差ボケ対策アプリは2018年10月にも社内の事務系社員を対象に実証実験を始め、2019年4月をメドに一般向けにアプリを提供する計画だ。開発は着々と進んでいるように見えるが、必ずしもここまで順調だったわけではない。小野沢氏によるとプロジェクトを進める過程では大きな困難があったほか、推進するなかで鍵となる出来事も複数あったという。