ホンダが2040年までに先進国における全ての新車を電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にすると宣言した一方、置き去りにされている印象なのがハイブリッド車(HEV)技術である。多額の投資が必要なEV開発の原資は、HEVなどの既存技術の利益である。HEVの競争力向上を軽視して、EVとFCVに移行するまでの今後20年を乗り切れるのか。
ホンダのEV戦略については、米GMや中国・寧徳時代新能源科技(CATL)などとの提携によって巻き返してきた。「電池の調達戦略がまだ見えていない」(ゴールドマン・サックス証券の湯澤康太氏)という心配は根強いが、「前進している」(JPモルガン証券の岸本章氏)と評価する声も出てきた。GMのEVプラットフォーム(PF)を採用するまで踏み込む戦略は、自前主義にこだわるかつてのホンダから脱却しようとする意気込みを感じる。
当面はGMとの協業でしのぎ、20年代後半に自社開発PFを採用したEVを投入する戦略も、もっともな考え。ホンダが開発を主導し、GMにも供給するPF「e:Architecture(イーアーキテクチャー)」を採用したモデルの投入は、順当ならば27年前後に全面改良する次期「シビック」あたりからか。そこからホンダのEV開発における本格的な攻勢が始まるわけだ。
一方で不透明なのが、今後20年近くにわたりEVと並んで重要なはずのHEVである。日経クロステックの調べで、ホンダが2モーターHEV技術「e:HEV(イーエイチイーブイ)」のモーターやインバーターの開発は継続するものの、エンジン新型機の開発を止めていることが分かった。ホンダは既存エンジンの改良で40年までしのぐ算段である。HEVの燃費性能(二酸化炭素排出量)はエンジン熱効率によって大きく左右されるが、今後大幅な進化は望めない。