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 瞬く間に浸透した「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉。デジタル技術を用いた事業変革を指し、筆者も小売りやサービス業、製造業など様々な業種の取り組みを取材してきた。これらはサービス改善や品質向上、効率化といった「攻め」の側面が多かったのだが、最近「守りのDX」ともいえる技術に出合った。日立製作所の「感性分析サービス」がそれだ。組織のブランドイメージ保護やモラル管理に役立てられる可能性がある。

 TwitterやInstagramといったSNSへの投稿などから、自社の事業戦略に有用な情報を収集・分析する「ソーシャルリスニングツール」。消費者ニーズの発掘、自社商品やサービスへのイメージ調査などで利用が広がっている。SNS上には有益なデータが多く眠る一方、批判や誹謗(ひぼう)中傷などを含む投稿が集中する炎上リスクも生まれている。

 日立の感性分析サービスはAI(人工知能)を使ってテキストデータから読み取れる感情を分析・可視化できるというもの。2018年10月に始めたサービスで、テキストデータから「Positive(好意的)」「Neutral(中立)」「Negative(悪意的)」の3段階の感情レベルと、「うれしい」「おいしい」「驚き」「要望」「疑問」「怒り」「不満」など81種類の感情を読み取る「感情分析」を主な機能として提供する。SNS以外にも、新商品開発やプロモーション戦略、売り上げ予測、アンケート結果の分析といった様々な用途に使え、企業や政府系機関など数十社が利用しているという。

日立の感性分析サービスは様々なテキストデータを分類・分析できる
日立の感性分析サービスは様々なテキストデータを分類・分析できる
(出所:日立製作所)
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 日立は2021年10月7日、この感性分析サービスに新機能「モラル分析」と「意外性分析」を追加した。自然言語処理技術と社会心理学の知見を応用し、炎上を未然に防いだり素早く対処したりするためのサービスだ。

 新たに加わったモラル分析は米国の社会心理学者ジョナサン・ハイト氏らが作成した「道徳基盤辞書」を基に、日本語版道徳基盤辞書の開発者である東京工業大学の笹原和俊准教授の助言を得て開発した。日立によると道徳基盤辞書は学術分野での活用がほとんどで、商用利用は世界初。分析対象のテキストデータが持つ道徳的な価値観を定量的に可視化できるようになるという。

 道徳基盤理論では弱者や個人が傷つけられることは不当であるとする「擁護」、不公正な扱いを受けることは不当であるとする「公正」、自身の所属する集団を作り維持しようとする「内集団」、階級や地位などを順守すべきだとする「権威」、理屈なしで汚してはいけないものがあるとする「純潔」の5つの普遍的・通文化的基盤を提示しており、モラル分析ではこれらの道徳的観点が順守されているか否かを評価する。