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 システムモダナイズが何度目かのブームだ。モダナイズを通じてメインフレームからクラウドへ移行したり、COBOLアプリをJavaで書き換えたりして、レガシーからの脱却を目指す。これまでも情報システムを取り巻く課題の1つではあったが、モダナイズに踏み切る理由には変化もある。

 これまでは、メインフレームやCOBOLアプリを扱える技術者減少への対策、高止まりする維持費の削減などが大きなテーマだった。最近になり、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のために、レガシーからオープンなシステムへ移行したいというユーザーニーズが強まってきた。

 こうしたニーズに応えるべく、ITベンダーもシステムモダナイズの支援に力を入れる。これも何度目かのブームといえるが、例えば富士通は2022年9月に「モダナイゼーションを推進、DX基盤整備を支援」を掲げ、モダナイゼーションサービスの強化を発表している。

 モダナイズに際しユーザーの考えどころの1つが、既存システムを開発、運用してきたITベンダーとの付き合いをどうするかだ。現状維持でモダナイズ後も面倒を見てもらうか、モダナイズを機に他ベンダーや自社内製などに切り替えるかである。これも何度目かのブームだが、ベンダーロックインからの脱却が注目されているようだ。「ITベンダーとのもたれ合いから抜け出し、ITの主導権を自らの手に取り戻そう」と考えるユーザーにとって、モダナイズは好機である。

 ただし、脱ベンダーロックインは良いことばかりではなく副作用もあるので、軽々に取り組めはしないと思うのだ。

厄介者が戻ってくる

 ベンダーロックインを抜け出すメリットは何か。「ソフトやハードの調達の主導権が取り戻せる」「発注者として開発や運用作業についてコンペができる」ので、従来よりもコスト削減が図りやすい。ベンダーへの依存体質をあらためてシステム内製にまで踏み込めば「サービスの開発、改変スピードを上げられる」。これからDXに注力しようというユーザー企業にとっては良いことずくめではないか。

 こうした脱ベンダーロックインのメリットを思い浮かべたIT担当者のあなた。「ようやくベンダーの言いなりから解放される」とうっとりとした気分になるかもしれない。

 しかし、それは長くは続かず、漠然とした不安がじわじわと胸に広がっていくだろう。理由は分かっている。そう、厄介者のシステムが自分の元に戻ってくるからだ。