「順調な滑り出しだった」。JR九州の古宮洋二社長は2022年9月29日の会見で、同23日に武雄温泉駅(佐賀県武雄市)と長崎駅(長崎市)間で開業した西九州新幹線をこう評価した。JR九州は開業から6日間の西九州新幹線の利用人数が約4万6200人だったと発表。21年同時期の諫早駅(長崎県諫早市)と長崎駅間の特急と比べて3倍以上に増えた。開業日に限ると約5.6倍。沿線では西九州新幹線フィーバーが巻き起こった。
特に長崎駅は大盛況。開業日、日が昇る前からJR九州の関係者や報道陣、子ども連れの家族、鉄道ファンなど大勢の人が詰めかけた。始発列車が出発するおよそ3時間前、午前3時半ごろには既に切符を求める人などで長蛇の列ができていた。
長崎駅では午前5時から開業式を開催。JR九州の古宮社長や斉藤鉄夫国土交通相、長崎県の大石賢吾知事らが参列した。全国新幹線鉄道整備法に基づき、1973年に整備計画が決定してからおよそ半世紀。建設費約6200億円の西九州新幹線に対して古宮社長は、「開業による(長崎市など沿線地域の)交流・定住人口の増加に期待している」と語った。
長崎県は西九州新幹線の開業を「長年の悲願」としてきた。大石知事は、「新幹線の開業効果を享受できるよう、観光資源の磨き上げなどに官民一体で取り組んできた」と話す。特に長崎市は市区町村別の人口の転出超過数が2年連続で全国ワースト2位。西九州新幹線の開業効果に懸ける思いは強い。
開業式を彩る長崎駅一日駅長にはタレントの長濱ねるさんを起用。長濱さんは長崎市出身。22年10月3日に放送が始まったNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」では、長崎県・五島列島に住む若者の役を演じるなど、“長崎愛”にあふれる人物だ。
西九州新幹線の開業とともにオープンした新・長崎駅について尋ねると、「プラットホームの南端から見える長崎港に感激した。長崎市は海や山など自然が豊かな街。この景色をたくさんの人に楽しんでもらいたい」と答えてくれた。