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 新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークが進み、オフィスの形が変わろうとしている。そこで注目され始めたのが、VR(仮想現実)空間を仕事場とした「バーチャルなオフィス」だ。なんと実際に、会社全体をVRオフィスに移転するという動きも出てきた。AI(人工知能)自動翻訳エンジンを手掛けるロゼッタは、2020年10月1日に本社機能をVR空間へ移転させた。

ロゼッタVR本社での集合研修の様子
ロゼッタVR本社での集合研修の様子
海外の技術者との会話では、画像のように日本語字幕を出せるようにしていく。(出所:ロゼッタ)
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 ロゼッタの狙いは、リモートワーク状態でも同じ空間に集まることでコミュニケーションを創出し、リモートワークで低下しがちだったシナジー効果や成果物の質を取り戻すことである。

 「アイデアは社員が集まったときのふとした会話から生まれる。テキストチャットやビデオ会議からでは生まれない」(ロゼッタ代表取締役CEOの五石順一氏)。この半年間、全面的にリモートワークを採用し、社員の働きやすさは向上したものの、逆に成果物のクオリティーが低下した。さらには社員同士のコミュニケーションが円滑にいかず、バラバラになってしまうことに対する危機感があったという。

自動翻訳や会話の自動記録・検索、海外拠点との連携も

 ロゼッタがVRオフィスに移転した狙いは3つあるという。1つは、前述した社員間のシナジー効果を取り戻すことだ。

 第2に、グローバル化が挙げられる。「これまでも海外の技術者を採用してきたが、社内コミュニケーションの関係でどうしても日本在住を条件とする場合が多かった」(五石氏)。VRオフィスなら海外拠点からでもオフィスに参加でき、社員同士のコミュニケーションが図れるので「本当の意味でのグローバル化が実現できる」(同氏)。

 第3に、デジタル空間のVRオフィスならではの追加機能を実装することで、利便性を高めることである。例えば、ロゼッタの強みであるAI自動翻訳機能の追加だ。社内で多言語のやり取りがあっても、リアルタイムで自動翻訳してVRアバターの前に字幕を表示できる。

 さらに、VR空間内の会話をすべて記録して検索可能なテキストデータとして保存する機能も実現可能だ。音声認識とテキスト化の技術を応用して、会議やアイデア出しのブレインストーミング、雑談などをすべてテキストデータで保存することで、議事録いらずになる。さらに、データベースの類似検索によって、過去の会話から横断的な検索もできる。

 ロゼッタは、こうした機能を盛り込んだVRオフィスをサービスとして事業化する狙いだ。「自社で実験的に利用しながら、2021年には提供できるようにしたい」(五石氏)とする。その第1ステップとして、ロゼッタは2020年10月9日にSynamon〔シナモン、東京・品川)との資本業務提携を発表。今後、同社が提供するVR空間提供サービス「NEUTRANS BIZ」をベースに独自機能を組み込んだ「VRオフィス」サービスの事業化に取り組む。

 今後のVRオフィス導入スケジュールについて五石氏は、「まずは第1段階として、経営陣など十数人がVR空間で会議やミーティングを行う。続いて対象社員の人数を拡大していき、2020年冬には100人規模まで利用者を増やしたい」と話す。