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 「品質部門が褒められることはない。不良率が下がれば設計開発・製造部門が褒められ、不良率が上がれば品質部門が責められる」。三菱電機の一連の品質不正に関する調査報告書が2021年10月1日に公開された。冒頭のコメントは、社外有識者による調査委員会が実施したヒアリング調査の中で、品質部門の従業員が語った内容だ*1

*1 調査委員会は、西村あさひ法律事務所の弁護士、企業倫理や品質マネジメントの専門家らから成る。

 今回の調査報告書は基本的に、同社名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)と長崎製作所(長崎県時津町)で発覚した品質不正に対する調査に基づいているが、最終的には三菱電機全体での品質不正の調査を目標としている。そこで、三菱電機全従業員に対するアンケートや190人に対するヒアリング調査が実施された*2

*2 アンケートおよび調査委員会への情報提供、社内点検や職制を通じた申告などを合計すると、今回の調査報告書を公表した時点で、品質に関する問題の申告は2305件あったという(既に公表・是正・解決したものや。重複しているものを含む)

 300ページ近くになる調査報告書では、18年度以前の品質問題や品質点検の概要にも触れつつ、可児工場と長崎製作所の品質不正の経緯を原因や背景を分析し、それらを踏まえた提言を行っている。本稿では、調査報告書の中でヒアリング調査の結果として明らかになった従業員の生の声に基づき、品質不正の背景にある「人の気持ち」に注目してみたい。

三菱電機の品質不正を調査した調査委員
三菱電機の品質不正を調査した調査委員
左から、調査委員長の木目田裕氏、調査委員の梅津光弘氏、同棟近雅彦氏。(出所:日経クロステック)
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上司や会社に対する不信感

「長崎製作所には、『言ったもん負け』の文化のようなものがある。改善を提案すると、言い出した者が取りまとめになり、業務量の調整もしてもらえないので、単純に仕事が増える。そのため、担当者は皆、QC診断の場など公の場では何も言わず、飲み会や雑談の場でだけ職場の問題を話す」

「結局は、問題の是正を行うのは可児工場の自分たち自身で、是正の支援・サポート等を本社から得られるとは思えなかったので、自分たちの負担を増やすだけの通報は、やりたくなかった」

 従業員の多くから、「上に言っても何も変わらない」「問題を挙げても結局自分で処理をさせられる」といったように、会社や上司に対する不満の声が聞かれたという。

 現場で働く末端の従業員と、部長や課長と言った管理職の従業員との間の溝は、三菱電機が21年度上半期に実施した「従業員意識サーベイ」の結果からもうかがわれる。ほとんどの設問において、末端の従業員と部課長級の従業員の回答の間には大きな隔たりがあり、課長級従業員と部長級従業員の認識の間にも乖離(かいり)がある。

 例えば、「自部門では、オープンで率直な(風通しのよい)コミュニケーションがなされている」という設問に対する末端従業員の平均値は、全社平均から-2ポイント。これに対して課長級従業員の平均値は全社平均から+17ポイント、部長級従業員の平均値は全社平均から+25ポイントとなっている。

「部下が上司に気軽に相談できる環境ではない。相談しても、『それでどうするのか』と逆に問い詰められる」

 といった声が調査委員会には多数、寄せられたという。