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 「人工知能(AI)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を業務に適用したいというニーズは広がっているが、SIer(システムインテグレーター)の出番は減りそうだ」。ここ数カ月、AIやRPAといったデジタル関連の取材を進めていくうちに、こんな考えを持つようになった。

 SIerにとっては先行きを不安にさせる、暗雲が立ち込めるような考えなのかもしれない。記者がこうした考えを持つようになったのは「AIの活用」「RPA関連サービスの動向」というテーマが異なる取材で同じ指摘を受けたからだ。その指摘とは「SIerが提供するサービスの料金が高くて採用できない」というものだ。

 AIの活用取材であるユーザー企業の担当者に聞いたのは「AIを初めて業務に適用することになりどんな業務に適用すればよいか提案を受けようと、大手のSIerに打診してみた。すると数千万円もするコンサルティングを通して適用案を出すという提案を受けた」という話だ。

 そのユーザー企業がSIerに打診した時は、まだ「この業務にAIをこう適用する」というイメージが固まっていなかった。業務の効率化に直結するAIの活用提案を受けるつもりで打診したところ、SIerは料金が数千万円のコンサルティングを提案してきたという。「AIの活用策を探るだけでそんなにかかるようでは費用対効果は見込めない。結局SIerの提案は断った」とその担当者は振り返る。

 代わりに組んだのがAIを組み込んだサービスを提供していたベンチャー企業だった。ベンチャー企業に打診すると「ユーザー企業がいる業界へのAI適用経験はありません。ですがこれを機にこの業界での適用実績を作って、当社のサービスも作り込んでいきたいので、ぜひ一緒にやらせてください」と、コンサルティング費用なしで引き受けてくれたという。その結果、ある事務処理にAIを適用することができ、業務の効率化が図れる成果を得たという。

AIだけでなくRPAでもSIerは高いのか

 「SIerの料金は高い」という同じ指摘は、月額数十万円でRPAの開発人材を企業に送り出すサービスを手がける人材派遣サービスの責任者への取材でも聞いた。「AIにとどまらずRPAでもSIerは高いのか」と驚いた。そのサービス責任者によるとユーザー企業では働き方改革の具体策として、データのコピー・アンド・ペーストといったPCを使った定型作業を、RPAのソフトウエアロボット(ソフトロボ)で自動化しようという動きが強まっているという。

 しかし、RPAのソフトロボを開発できる人材や、RPAを社内に普及するための支援人材は不足気味。人材を見つけても「SIerのエンジニアに常駐してもらうと月額で100万円以上、優秀なエンジニアだと月額数百万円もする。これは高いと思い、RPAの導入を見合わせる企業も出てきている」とその人材派遣サービスの責任者は説明する。一方で月額数十万円のRPA開発人材を派遣する同社のサービスに対する引き合いは多いという。

 これらの取材を振り返ると「AIの活用法はベンチャー企業に相談」「RPAの開発人材は人材派遣サービスを通して確保」といった、SIerに頼らないデジタル化推進の戦術が浮かび上がってくる。この動きが加速すれば、SIerの出番は減っていきそうだ。

 SIer側に視点を移すと、こうしたベンチャー企業や人材派遣サービス事業者は、AIコンサルティングやRPA導入支援で価格を破壊する「ディスラプター」になり得る。この動きが今後加速した場合、SIerはこれらにどう対抗していくのかに注目していきたい。