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太陽光発電のコストは2050年に2円/kWh割れか

 ちなみに、ドイツのFraunhofer研究機構は、2050年には太陽光発電のコストが米国で1.5~5.3米セント/kWhになると予測している2)。これは、中東の砂漠のような特殊な環境での数字ではなく、米国での一般的な太陽光発電を想定した数字で、日本でも実現可能な水準といえる。

 ただ、この予測は最近のスワンソンの法則の習熟率の上昇を意図的に採用しておらず、同研究機構も「かなり保守的な予測」としている。最近の高い習熟率が今後も維持されると仮定すると、2円/kWh割れは固く、1円/kWhに近付く可能性さえありそうだ。

 さらに発電コストの低下は、2050年で終わりではなく、2100~2150年ぐらいまでは発電コストの低下がずっと続くことになる。それを否定する課題は筆者にはまだ見つかっていない。

 こういうと、冒頭に書いた、コスト低下ゆえの混乱が今まさに、石炭の逼迫という形で出始めているのではないか。その対策として、火力発電インフラの増設、または蓄電システムの大量導入が必要になり、実質的には再生可能エネルギーのコスト低下は進まないのではないか、という疑問が出てくるかもしれない。

太陽光+蓄電池でも2030年前後に石炭より安くなる

 中長期的にはその課題も問題にならない。こうした電力需給の平準化、または安定化のためのシステムのコストも再生可能エネルギーの大量導入の影響で下がってくるからだ。例えば、再生可能エネルギーで生産したグリーン水素のコストは早ければ2025~2030年には天然ガスなどのコストに並ぶか、下回ってくる見通しである。それを火力発電の燃料に使えば、再生可能エネルギーの大量導入と系統の安定化、脱炭素化、そして発電コストの低減を同時に実現できる。

 蓄電システムについても、シンクタンクの英Carbon Trackerは、太陽光発電と蓄電システムの組み合わせの発電コストが2027年ごろには新設の化石燃料火力発電のコスト、2034年には償却が終わった化石燃料火力発電のコストに並ぶとみている。蓄電池自体、高い習熟率で製造コストや利用コストが低下していることや、電気自動車(EV)向け蓄電池の再利用が今後本格化することを考慮すると、その時期がさらに早まる可能性もある。

 ただし、短期、つまり今後10年前後は、過渡期ならではの“産みの苦しみ”が避けられないことだろう。再生可能エネルギーは、中途半端な導入量では出力変動の影響が大きく、そのバックアップシステムの導入やコスト低減もまだ道半ばになるからだ。場合によっては、化石燃料由来の火力発電や蓄電システムの国による増設支援や事業支援などが必要になるかもしれない。


参考文献

1)Woodhouse,M. et al."Crystalline Silicon Photovoltaic Module Manufacturing Costs and Sustainable Pricing:1H 2018 Benchmark and Cost Reduction Road Map,National Renewable Energy Laboratory.,Feb. 2020.

2)Mayer,J.N. et al.,"Study:Current and Future Cost of Photovoltaics,"Agora Energiewende,Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems,Feb. 2015.