2022年9月28日、スイスのビジネススクールIMDは2022年の「世界デジタル競争力ランキング」を発表した。ランキングの対象となった63カ国・地域のうち、日本は29位だった。2021年から順位を1つ落とし、2017年の調査以来、過去最低となった。
世界デジタル競争力ランキングはその国・地域で行政の慣行やビジネスモデル、社会全般の変革につながるようにどの程度デジタル技術が活用や展開ができているかを示すものだ。各国・地域の統計情報のほか、経営者や管理職に対する聞き取り調査を基に、「知識」「技術」そしてデジタル変革を展開するための準備度である「未来への準備」の3つの因子や、「人材」や「規制の枠組み」など9つのサブ因子について順位付けし、総合順位を決定する。
3つの因子のうち「知識」は2019年の25位から28位、「技術」は24位から30位、「未来への準備」は24位から28位に転落した。サブ因子のうち「人材」は2022年に50位、「規制の枠組み」は47位、「ビジネスの俊敏性」は62位だった。
さらにサブ因子の内訳を見ると、「人材」の中の「国際経験」は63位、「デジタル/技術的スキル」は62位、「ビジネスの俊敏性」の中の「機会と脅威への素早い対応」、「企業の俊敏性」「ビッグデータとアナリティクスの活用」は63位だった。
この結果について「63カ国(・地域)中ビリのものが結構あった。危機感を持ってもらっているのは非常にいいことではないかと思う」と河野太郎デジタル相がコメントした。日本の経営者や管理職への聞き取り調査がランキングを構成する要素の1つとなっているため、同ランキング結果は日本の経営者や管理職が日本のデジタル競争力に対して悲観的に捉えていることの表れといえる。日本の民間部門における「デジタル敗戦」が浮き彫りになった格好だ。
韓国や台湾と比べても変革の不在が顕著
しかも「データの傾向は前年までと変わらず、ただ低落した」と高津尚志・IMD北東アジア代表は分析する。つまり、日本はまだ負け戦のただ中にあるということだ。
アジアの中でも日本の敗色は濃い。アジアのトップはシンガポールで総合4位だった。韓国は2018年の総合14位から同8位に上昇し、中でも「未来への準備」の因子は17位から2位に上がった。台湾も2018年の総合16位から11位に順位を上げたが、やはり「未来への準備」の因子が22位から8位となった。日本の「未来への準備」は28位で、中でも62位となった「ビジネスの俊敏性」が足を引っ張った。