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 部品・材料不足への不安は高まる一方だ。一部では「自動車など生産調整が必要な業種があるのは確かだが、いたずらに騒ぐ必要はない。部品の供給が止まったわけではない」という指摘もある。しかし、現場の声に耳を傾けると、従来なかった深刻さを感じる。

 日経ものづくりが2021年9月に実施したアンケート調査結果からは、「従来ない納期の遅延」に限らず、「売り手市場での優先的地位の乱用」、「研究・開発の遅れ」といった悪影響が出ている様子が浮き彫りになった。

7割超が「部品・材料不足に直面」
7割超が「部品・材料不足に直面」
「製品に必要な部品や材料が不足する状況に直面しているか」という設問に対して、回答者の7割超が「直面している」と回答。「過去に直面した」と合わせると、部品・材料不足に直面した経験がある回答者は9割弱に及ぶ。(出所:日経ものづくり)
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 同アンケート調査で、「(部品や材料が不足する状況に)直面している」と回答した人に「不足している部品・材料」を尋ねたところ、6割の回答者が「電子・電機部品(半導体素子以外)」を挙げた。

 具体的にどんな部品・材料の不足に直面しているのか。電子メールによる追加取材に応じてくれた人の回答から一部を抽出したのが下記の表だ。「ボールねじ」から「樹脂材料」「コネクター」「センサー」、「ロボット」に至るまで、不足していないのは何かと逆に尋ねたくなるほど多岐にわたる。

不足している部品・材料の一例
不足している部品・材料の一例
(出所:日経クロステック)
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 追加取材に応じてくれた回答者からは、「リミットスイッチやコネクターの納期が遅れている。組み合わせ部品の場合は、何が問題で納期が遅れるのか分からない」(その他の製造業、設計)という声も上がっている。

「納期回答が93週」というケースも

 部品・材料メーカーからの納期遅れは深刻なようだ。「マイコンで最大納期77週、ADコンバーターで93週と言われた」(その他の製造業、その他)

 「リミットスイッチとコネクターの納期が大きく遅れている。従来はカタログ標準品(標準在庫品)なら2~3週間以内で入荷していたのが、販売店より納入まで3カ月と一度返答あり、納期間近になってさらに3カ月以上延びた」(その他の製造業、設計)など、「これまで体験したことがない」(その他の製造業、その他)と危機感を募らせている様子がうかがえる。

 部品・材料不足によって「どうしても過剰発注になって、さらに需給が逼迫。次の納期が遅れても、多少は持ちこたえられるように少しでも多く確保しようと、余分に発注する。この悪循環がさらなる供給不足を生んでいる」(機械部品・電子部品メーカー、調達・購買)との見方は根強い。

 この他、「景気回復に伴う海上輸送の需要増加で、海外から材料を調達するのに必要なコンテナ船を確保できない」(総合電機・家電メーカー、生産技術・生産管理)と、納期遅れの理由として物流上の問題を挙げる回答者もいた。