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 記者は先日、不思議な体験をした。ある食器を使って塩分控えめのラーメンを食べると、薄味が濃く感じたのだ。ある食器とは、キリンホールディングス(HD)と明治大学が共同で開発したデバイス「エレキソルト」である。エレキソルトから微弱な電流が流れることで、利用者の塩味の感じ方が変わるのだ。

キリンホールディングスと明治大学が共同で開発したデバイス「エレキソルト」
キリンホールディングスと明治大学が共同で開発したデバイス「エレキソルト」
人体に影響しない微弱な電流を流す。(出所:キリンホールディングス)
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 塩分の取り過ぎが健康に悪いことはよく知られている。特に日本人は1日に摂取する食塩量が世界保健機関(WHO)の掲げる食塩摂取基準の2倍ほどと多い。

 しかし減塩を試みようとしても、慣れた味や食習慣を変えるのは難しい。これまでは塩分を控えた食事(減塩食)のおいしさに対して、少なからず「我慢」が必要だった。キリンHDが実施したアンケートによると、実際に減塩している人や減塩する意思のある人のうち63%が減塩食に課題を感じていた。そのうち約8割は味に対する不満を抱えていることが分かったという。

 そこでキリンHDは、「電気味覚」と呼ばれる技術に着目した。塩味を増強させる電流波形を独自に開発し、この波形に沿った微弱電流を流す機能を搭載したエレキソルトを作ったというわけだ。エレキソルトは、食品に含まれるナトリウムイオン(Na+)の動きを制御したり、舌の味細胞に刺激を直接与えたりすることで、利用者の味の感じ方を変える。おわん型とスプーン型があり、用途によって使い分ける。

ナトリウムイオンの動きを制御して塩味を増強させる仕組み
ナトリウムイオンの動きを制御して塩味を増強させる仕組み
電極(デバイス)が陰極となるように電流を流すと、食品に含まれるナトリウムイオン(Na+)がデバイスに引き寄せられる。その後、電極が陽極となるように電流を切り替えると、ナトリウムイオンが舌に接触する確率が高まり、塩味が増強される。(キリンホールディングスの資料を基に日経クロステックが作成)
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