全920文字
PR

 国土交通省は、マスメディアが使う「緊急放流」という言葉がよほど気に入らないらしい──。

 同省が2020年5月に開いた「水害・土砂災害に関する防災用語改善検討会」の初会合を傍聴し、何とも言えないいら立ちを感じた。

「異常洪水時防災操作」では、流入量と同じ量しか放流していないと国土交通省は強調する(資料:国土交通省)
「異常洪水時防災操作」では、流入量と同じ量しか放流していないと国土交通省は強調する(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

 緊急放流とは、豪雨でダムが満水に近づいた際、設備の損傷などを防ぐため流入量とほぼ同量を放流する操作のことだ。日経クロステックを含め、多くのメディアがこの表現を用いている。

 一方で、ダムを管理する国交省は、「異常洪水時防災操作」と呼ぶ。だが、一般の人がこの言葉を聞いて、内容を理解できるはずがない。国交省は冒頭の検討会で、改善すべき用語として異常洪水時防災操作を挙げ、言い換え方を探ってきた。

 緊急放流という言葉が一般化しているのだから、わざわざ検討会で議論する必要はないと思うが、国交省の考えは違っていた。ダムでため込んだ水を一気に放出するかのように誤解される恐れがある、というのだ。

 結局、他に適当な言葉がなく、国交省は10月14日の第3回会合で、緊急時の呼び掛けとして「緊急放流」を使う案を示した。だが、そこに至るまでの経緯を振り返ると、同省がいかにこの言葉の採用に難色を示してきたかがうかがえる。