「やった!今日イチのイワナを掛けた」――。2022年9月、複数の渓流釣り仲間と出かけた長野県で、もうすぐ納竿(のうかん)というときに私の釣りざおが大きく曲がった。魚が水面から顔を出し、その大きさにほくそ笑んだ数分後に事件が起きた。
魚を掛けた場所は、土手の上。足元から川面までは優に2メートルはある。さおを使って足元まで魚を引き抜こうとすれば、糸が切れる可能性が高い。とはいえ、渓流釣りに使う網(タモ)は柄が短いので魚には届かない。仲間を呼ぼうと電話をかけようとした。
ぬれないように保護していた記者のiPhoneを取り出したとき、手元から滑り落ち土手下の川に水没してしまったのだ。一瞬パニックになったが、今シーズンで1番大きなイワナの取り込みを優先することにした。魚とのやりとりを続け、十分弱らせた後、糸を直接手に取って土手の上まで魚を引き上げた。
水中で光る画面を確認
魚を籠に入れた後、水中に沈んだiPhoneの救出に取り掛かった。土手の上からはどうにもならない状況だったので私は川に入った。水深は1メートル以上あり、潜らないと川底まで手が届かない。意を決して頭から川の中に入ってiPhoneを探した。
しかし、水流があって泡だらけの水中では、目を開けてもiPhoneの場所が分からない。あきらめきれず、足で川底を探っているとiPhoneの画面らしきものが光ったのだ。
光っていれば泡だらけの水中でも場所の見当が付く。画面が消える前にすぐに潜り、何とか救出に成功した。