全1813文字
PR

 人間の感情をセンサーなどで読み取り、そのデータを利用して新たなサービス創出を狙う動きが増えている。OKI(沖電気工業)は2021年8月に日本サブウェイと協力し、表情・視線に応じて食料品を提案する実証実験を行った。表情を撮影するカメラ、メニューを映し出すディスプレーなどに工夫を凝らし、顧客の選択・行動に今までにない変化を与える試みである。日立製作所も20年7月、「幸福度の可視化」を手掛ける新会社「ハピネスプラネット」(東京都国分寺市)を設立。筋肉の動きなどから「幸福度」を測定しつつ、職場環境の改善などに生かしていく。


 この潮流は、さまざまなデータを取得できるセンサー類などの技術が発達してきたこと、スマートフォンの普及などで個人に応じてサービスの最適化も進めやすくなったことなどが後押ししている。さらに「人間の幸福(ウェルビーイング)」が注目されている昨今、企業としても新たな商機として捉えているようだ。

* 世界保健機関(WHO)憲章は「肉体的にも精神的にも社会的にも全てが満たされた状態」と定義する。新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の抑圧された心と向き合っていく必要も出てきている。

 その中でサンリオピューロランドを運営するサンリオエンターテイメント(東京都多摩市)も同社が強みを持つ「コンテンツ」と「幸福」を結び付ける活動に注力し始めた()。人間が抱く「Kawaii(かわいい)」という感情を解き明かす「Kawaii研究所」を設置。PwCコンサルティングなどとともに科学的にKawaiiという感情をひもとくことで、企業のマーケティングなどに生かしていこうとしている。実は「Kawaiiという感情を抱く人は幸福度も高い」(PwCコンサルティングディレクターの髙木健一氏)。

図 「Kawaii」の研究
図 「Kawaii」の研究
Kawaiiがどのような因子で構成されているのかなどを研究し、人間の幸福・活力向上に適用することを模索する。(出所:PwCコンサルティング)
[画像のクリックで拡大表示]

 Kawaiiをひもとくとはどういうことか。日本語の「Kawaii」は英語の「Cute」「Pretty」などと異なるニュアンスを含んでいるともに、「幼い動物の容姿に抱くかわいさ、ちょっと気持ち悪い独特なかわいさなどのさまざまな因子が複雑に絡まっている」(同氏)。つまり日本独特の感情がこもった言葉なのだ。この因子を分解・利用できるようにすることで、人間の幸福に寄与していこうと考えている。