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 「失敗しないDX人材育成」という特集記事を担当した。この記事を担当するにあたり、DX人材育成についてDXを積極的に推進している大手企業10社にその取り組みを取材。得た情報を整理して、「自律・成長を促す全体設計に」など7つの工夫にまとめて紹介した。今回は、筆者がこの記事をどんな視点でまとめたのか、という意味での「記者の眼」を紹介したい。

特集記事「失敗しないDX人材育成」の一部。DX人材育成に取り組む企業への取材を基に凝らすべき7つの工夫を紹介している
特集記事「失敗しないDX人材育成」の一部。DX人材育成に取り組む企業への取材を基に凝らすべき7つの工夫を紹介している
(写真:日経クロステック)
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 ここでの紹介を思い立ったきっかけは、社内の若手記者を中心とした雑誌の講評会に参加したことだった。若手記者がDX人材育成に関する記事を講評する場だったが、「7つの工夫はどうまとめたのか。最初から紹介する工夫を決めていたのか」など、この記事のまとめ方に関する質問が少なくなかった。

 記事のつくり手が記事のまとめ方に興味を持ってくれるのは、記者を20年ほど続けてきた筆者には、とてもうれしいことだった。若手記者の質問から「記事をまとめるスキルを高めたい」といった思いが伝わってきたからだ。

 こうしたことがあり、「7つの工夫をどうまとめたのかといったことに関心を持ってくださる読者の皆さんがひょっとしているかもしれない」と思うようになった。そこで本記事では、この特集記事をどういう視点でまとめたのかを紹介していこうと思う。

7つの工夫は「まとめた」ではなく「まとまった」

 さてここで読者の皆さんに問題を出したい。筆者は果たして、10社への取材が終わった直後の段階で、7つの工夫を見通せていただろうか。

 答えは「見通せてはいなかった」である。取材が全て終わった直後はいくつかの工夫がうっすら思い描けていたが、7つの工夫にまとまったのはその後、取材内容をつぶさに振り返って整理した結果だ。さらに言えば、取材を始めた段階では、全く見当がついていなかった。

 「7つの工夫にまとまった」と書いたのは、「筆者がまとめた」という感覚はまるでないからだ。筆者の思いよりも取材で得た事実を第一に考え、それがどんな意味合いを持つのか整理していった。意味合いを導き出したり整理したりする努力はしたが、「俺がやった」という感じは全くない。「努力していったら7つにまとまった」という感じだ。これにより筆者が執着しているトピックにだけ紹介内容が偏ることは回避できていると思う。

 ただし7つにまとまるまでが長かった。様々な作業や検討をしていったからだ。各社の取材成果を振り返り、「これは記事に紹介できるのでは」と思うものをピックアップしてデータ化。検索したり整理したりしやすくしておいた。これを10社について実施した後、取材成果のうち関連性や類似性が高いものをグルーピングしていった。

 それぞれの工夫も、関連している内容が漏れていないか、チェックをしながら決めていった。例えば、複数の企業への取材で、管理職や役員にもDX研修を実施しているとの話を聞いた。「業務現場の社員たちがDXを進めたくても、管理職や役員の理解がなければDX案件は進まない」といったことが起こらないようにするためである。

 ここで、研修の対象者に工夫がありそうだと見当がついた。取材では、業務推進の要とも言える現場のキーパーソンを対象にしていることも聞いていた。ならば工夫としては「管理職や役員、現場のキーパーソンには忘れずに研修を実施する」となりそうだ。

 筆者はさらに「研修対象者として重視すべきは、この2者だけでよいのだろうか」と検討。取材内容を振り返ってみると、新人や若手社員にDX研修を積極的に取り組んでいる話も聞いていた。小さいときからデジタル技術に慣れ親しんだZ世代が多く、DX関連のスキル習得も早いといった効果が見込めるからだ。

 そこで最終的に「適切な人に適切な研修を」という工夫を設定できた。「管理職や役員、現場のキーパーソン、新入社員には忘れずに研修を実施する」といった意味を込めている。

 こうした取り組みを各工夫についてコツコツと続けた結果、工夫が7つにまとまった。