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 モータースポーツの初心者にもっと安心・安全を提供したい――。マツダはそんな思いから、ドイツBosch(ボッシュ)と共同で、新たな取り組みに挑戦している。

 その取り組みとは、横滑り防止、トラクションコントロール(駆動力制御)、アンチロックブレーキといった、横滑り防止装置(ESC)を用いた車両の安定化機能を、サーキット走行中でもいざというときには利かせられるようにすることだ。マツダでは、そうした機能をDSC(マツダにおけるESCの呼称)のトラックモードと呼んでいる。同社は、レース車両としても使われている、「ロードスター」への搭載を目指して、現在開発を進めている。

開発中のトラックモードを搭載した試験車両のロードスター
開発中のトラックモードを搭載した試験車両のロードスター
先頭の黒色の車両が試験車両。2022年11月5日に開催されたロードスターのパーティーレースで試験走行した。(写真:ボッシュ)
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 一般的なESCには、実は、オンかオフしかない。ESCをオンにしておくと、例えば、急加速の際にトラクションコントロールが働きエンジン出力を抑制する制御が入る。また、あえて車輪を横滑りさせながらオーバーステア気味に急旋回しようとするときも、外輪側にブレーキをかけるという制御が働き急旋回を阻まれてしまう。要するに、ESCをオンにしておくと、サーキットの走行タイム悪化の原因になる。そのため、サーキット走行ではこれを嫌って、ESCをオフにするケースが一般的だった。

 背景にあるのは、横滑り防止の機能もトラクションコントロールの機能も、一般道を想定した機能であることだ。このため、車両の運動性能の限界に近い走りをしようとすると、それを抑制する制御が働く。だが、スピードを争うサーキットでは、車両の運動性能をぎりぎりまで引き出したい。ここにジレンマがある。

 そこで、マツダとボッシュが考えたのは、本当に危険なときだけESCを機能させようというアプローチだ。具体的には、大きな危険を伴うウエットな路面ではESCを機能させ、危険性の少ないドライな路面ではESCを機能させない。そんなオンとオフの中間的なモード(トラックモード)を設けて、モータースポーツ初心者に安心・安全を提供しようと考えている。