ユーザー企業がITエンジニアを大量に雇用し、システム内製に舵(かじ)を切る動きが盛んだ。ITエンジニア向けの転職サイトではユーザー企業による求人が目に見えて増えたほか、新聞などの一般紙でも内製に取り組むことの重要性を訴える記事が増えてきたように思う。
米国や中国などと比べてデジタル活用で遅れてきたとされる日本において、ユーザー企業によるシステム内製の流れは歓迎すべき動きであり、記者個人としても応援したい取り組みである。
ただ、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と同じように、「内製」という言葉が曖昧に使われている点は、よくモヤモヤする。Twitterでも「これは内製と呼べるのか?」という議論をよく目にする。そこで今回の記者の眼では、「システム内製」という言葉の定義について改めて考えてみたいと思う。
「企画と設計だけ内製」の謎
まず記者にとって、システム内製とは開発工程における企画と実装の両方を手掛けていることが大前提である。時々、「当社は企画と設計の上流工程だけ内製している」と話すユーザー企業もいるが、正直ピンと来ない。というのもそれではシステム内製の最大のメリットである、クイックな開発・改善活動ができないからだ。
内製先進企業は内製化のメリットについて異口同音に、「アジリティー(機敏さ)」を挙げる。スピードが求められるデジタル施策においては、クイックに対応できる開発組織を社内に内包する体制が望ましいと考えている訳だ。実装が伴わない上流だけでは内製ではないだろう。