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 「多くの企業がオフィス火災の避難訓練を実施しているが、ITの避難訓練をしている企業は少ない」。動画配信サービスの米Netflix(ネットフリックス)で、過去にシステムのアーキテクトを務めたことがある人物の言葉だ。Netflixはシステムの本番環境において故意にサーバーダウンや応答遅延などの障害を発生させ、全体としての回復性を検証する「カオスエンジニアリング」の実践企業として知られる。

 冗長化など災害時にシステムを復旧する仕組みを整えたとしても、日常的に有効性を試していなければ、障害が起きた際にツールが動作しないといった事態に陥りかねない。その意味でカオスエンジニアリングはITの避難訓練と呼べる。災害時の適切な指揮や対応の手順なども、組織面での対応も約束事を決めるだけでなく、日々訓練しておくべきだ。

 初めてカオスエンジニアリングの取り組みを聞いた際、海外ではネット企業に限らず金融機関でも採用例があるのを知って驚いた。当時はその重要性を理解しながらも、日本の金融機関がカオスエンジニアリングを導入するのはまだ先になるだろうと感じた。

日本の金融機関でも実践

 そこから数年がたち、日本の金融機関でもカオスエンジニアリングを実践する企業が現れた。Netflixのように本番環境そのものではないが、本番同様の最終的なテスト環境で意図的に障害を起こす訓練を実施しているのがジェーシービー(JCB)だ。

 JCBは2020年度に、顧客や企業により良いサービスを迅速に提供する手段として、アジャイル開発やマイクロサービスアーキテクチャーを採用したIT基盤「JCB Digital Enablement Platform(JDEP)」を構築した。インフラはクラウドサービスの「Google Cloud」を利用する。

 JDEPはスマートフォン決済サービスに代表される新規参入企業との競争に勝ち抜くため、顧客満足度を高めるサービスの開発を目的とする。既にJDEPを活用して、会員向け優待など5つのサービスをリリース済みだ。2022年度下期からは2023年度に向けて、スマホアプリ向けに10件超のサービスを開発している。