佐賀県大町町では、2019年の豪雨で浸水した地域が、21年8月の豪雨で再び浸水した。浸水した住宅の応急処置を手掛けるボランティア組織「風組関東」の小林直樹代表が大町町での活動で懸念しているのは、濡れた建材をそのまま再利用している被災者が比較的多いことだ。19年の被災から間もないので、改修したばかりの新しい建材を剥がすのをためらっているのだ。
改修に使われているのは、耐水性能のない一般的な建材がほとんどなので、そのままだと下地材や壁体内が乾かず、カビが発生しやすくなる。「改修費用の負担を抑えるには、なるべく建材を剥がさず応急処置で済ませる方がいいのだが、カビの発生リスクを抱えることになるので健康被害が心配だ」と小林代表は話す。
小林代表が住宅の浸水対策に必要だと考えているのは、大掛かりな改修をせずとも、カビの発生を防ぎながら、住み続けることを可能にする建材だ。
例えば、濡れても変形しにくいムクの板材と吸水しにくい発泡系の断熱材を組み合わせた腰壁。着脱が容易な留め方にする。浸水したら板材を外し、断熱材が乾いたら再び板材をはめ込む。ムクの板材を用いた腰壁は、小林代表が応急処置に当たった住宅で使われており、乾燥のために一旦取り外した後、再利用できたという。
住宅用の建材・設備には、浸水リスクを抱えた住宅に必要となる製品がほとんど存在しない。毎年のように各地で浸水被害が発生しているにもかかわらず、なぜ製品化が進まないのだろうか。