AI(人工知能)の進歩により無くなる仕事をテーマにした書籍が度々出版されては売れ、インターネット上にも類する予測が散見される。おおむねコミュニケーションやクリエイティブが必要な業務は代替が難しいとされてきたように思うが、本当にそうだろうか。あらゆる作業やスキルはAIに代替されうると認識し、将来を謙虚に見つめ直すべきだ。
最近、創造力を持った「クリエイティブAI」の進化が目覚ましい。米Google(グーグル)の研究チームGoogle Researchは2022年10月、文章を基に動画を生成するAI「Imagen Video」の開発を発表した。「a teddy bear washing dishes」といったテキストを与えると、AIは実際に熊のぬいぐるみが洗い物をする動画を生成する。テキストを基に一瞬で画像を生成するAIはテレビやSNS(交流サイト)でも見かけるようになった。我々が認知する限りで人類が最も創造性を持った存在だとは言えなくなる日も近いのかもしれない。
記者は、人類は道具の発明で自らの能力を外部に切り出し拡張することで発展してきたと考えている。石器に始まり、火、蒸気機関、電気、コンピューター、インターネットといった発明は人類の手や足、目や耳や口を拡張し、生身では到底得られない力を与えてくれた。
数ある発明の中でも、AIは極めて特別な発明だ。それはAI開発が、人類を人類たらしめてきた脳が持つ能力そのものを切り出す作業だからだ。そしてAIが人間の能力を超える「シンギュラリティー(技術的特異点)」はその最も重要なマイルストーンだと考えている。
この先、どんな仕事もAIの影響を受けないことはほとんどあり得ないだろう。意識すべきはAIが代替するのは作業であり、使うのは人間だということだ。「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIを使えないと仕事が無くなる」のだ。コンピューターやインターネットが使えないと仕事にならないように、AIが使えないと仕事ができないか、あるいは非常に生産性が低くなる。重要なのはどんなAIが生まれ、どう仕事が変わっていくか考えることだ。