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 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)史上、実際のビジネスに最も近い海外実証実験と目されるのが、「スロベニア共和国におけるスマートコミュニティ実証事業」(以下、今回の実証実験)である。NEDOが日立製作所とスロベニアの国営送電事業者「ELES」と共同で2016年から行っているスマートグリッドの実証実験で、19年には第1フェーズが完了。現在は第2フェーズにある。実証実験システムの構築・運用を担う日立によれば、実際の送電・配電*網を使って結果を出しており、その実績は、スロベニアはもとより欧州全体においてスマートグリッド関連事業の案件を受注するための重要な布石だという(記事最後の囲み「欧州進出の重要な橋頭堡(きょうとうほ)、元駐スロベニア大使に聞いた」を参照)。

* 送電は発電所から配電所(配電会社)へ給電すること。配電は配電所(配電会社)から需要家へ給電すること。なお、スロベニアでは送電事業者はELESの1社のみ。配電会社は5社ある。

 NEDOの海外実証実験では日本政府が資金を拠出し、相手国において実験用施設・設備を使うケースが多い。それに対して、スロベニアのケースでは、日本政府だけでなくスロベニア政府も資金を拠出した。また、実験用の施設・設備ではなく、スロベニアに設置してある実際の系統電力の送電・配電網を使っており、そこで日本発の技術が検証される。実験のための実験で終わってしまいがちな実証実験とは異なり、実際のビジネスに直結しそうな点が今回の実証実験の最大の特徴である。

今回の実証実験のイメージ
今回の実証実験のイメージ
DMSが第1フェーズで開発したソフトウエアで、配電事業者向け。AEMSとあるのが第2フェーズで開発したソフトウエアで、大口需要家/電力小売事業者向け。なお第2フェーズではDMSも併用している(出所:NEDO)
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 NEDOの横田和雄氏(スマートコミュニティ部 統括主幹)によれば、今回の実証実験の発端は2012年ごろまでさかのぼる。スロベニアは旧ユーゴスラビア連邦を構成していた中欧の国である。連邦構成国の中では最も西側に位置し、経済発展も一番進んでいた。連邦解体後も経済成長は順調に続き、構成国の中で最初にEUに加盟した。通貨はユーロで、国境検査なしで国境を越えられる「シェンゲン協定」にも加盟している。

 こうした順調な経済発展により電力需要が大きく増加し、安定供給が課題になっていた。さらにEU加盟国として全エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率を25%以上にする必要があるなどの課題もあった。こうしたエネルギーの課題の解決を図ろうと、スロベニアは日本の技術に着目し、アプローチしてきたという。その要請に応えるためにNEDOとスロベニア政府の間で複数の契約が結ばれ、12年12月には基礎調査、14年11月には実証前調査がそれぞれ始まった(ニュースリリース)。これらの調査は無事に完了し、16年11月から実証実験が始まる運びとなった。

今回の実証実験までの経緯(その1)
今回の実証実験までの経緯(その1)
(出所:NEDO)
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今回の実証実験までの経緯(その2)
今回の実証実験までの経緯(その2)
(出所:NEDO)
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