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 地方銀行の勘定系システムを巡り、富士通とNECが土俵際に追い込まれている。両社とも地銀向けに勘定系システムを提供しているが、利用行を徐々に減らしている。にもかかわらず、有効な打開策を打ち出せておらず、浮上の兆しは見えていない。地銀の勘定系を巡る大手ITベンダーの争いは既に趨勢が決してしまったのか。

 2021年9月27日、静岡県の清水銀行が出した1通のプレスリリースがIT業界の耳目を集めた。同行は勘定系システムに関して、富士通の共同化システム「PROBANK」を利用しているが、NTTデータが手掛ける中堅地銀向けの「STELLA CUBE」へ2024年5月に乗り換えると明らかにしたのだ。

PROBANKの利用行はゼロに

 清水銀行の発表は、富士通の地銀向け勘定系ビジネスにとって大きな意味を持っていた。富士通が2000年代に社運をかけて開発したPROBANKの利用行が、同行の離脱でゼロになる見通しになったためだ。

 清水銀行の発表のわずか3日前、2021年9月24日には、山口県の西京銀行が勘定系システムをPROBANKから日本ユニシスのオープン勘定系パッケージ「BankVision」に乗り換えると明らかにしていた。BankVisionを使う地銀が再び2桁に乗る一方、PROBANKは窮地に追い込まれ、日本ユニシスと富士通の明暗がはっきりと分かれた格好だ。

 PROBANKに関しては、開発段階のつまずきを引きずった側面がある。富士通がPROBANKの開発に手間取り、第1号ユーザーの東邦銀行(福島県)の稼働時期が2003年1月から同年9月に延期。それに引きずられる形で、PROBANKの採用を決めていた清水銀行や西京銀行の稼働時期が2年以上遅れた。こうした事態が影を落とし、ライバルの台頭を許した。

 富士通はPROBANKを含めた地銀向け勘定系ビジネスの先行きについて、「今後もあらゆる金融機関のお客様、および金融機能を必要としているサービサー(事業者)に対して、時代の変化や要請に合わせてデジタルに対応した新しいサービスを提供していく」とコメントする。地銀ビジネスについては、営業店などのチャネル改革や融資業務改革の支援に軸足を移しつつある。

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