ジャパンディスプレイ(JDI)が売り出した透明ディスプレーが、コミュニケーション分野で新たな用途を生み出している。対面する人の間に、透明ディスプレーを置くことで、コミュケーションを活性化するものだ。現在、顕在化しているのは、会話を音声認識によって文字起こしをし、これを透明ディスプレーに表示するという使い方。AR(Augmented Reality)グラスのようなウエアラブル機器ではなく、”設置型AR”ともいえる新しいスタイルである。
従来の透明ディスプレーは、イベントや展示会のデモンストレーションなど、広告宣伝用途で利用されるのがほとんどだった。その理由の1つに、透過率があまり高くなく、透明ディスプレーの向こう側が見づらいことが挙げられる。
ところが、この状況が一気に変わってきた。JDIが開発した透明ディスプレー「Rælclear(レルクリア)」が登場したからだ。ディスプレーの大きさは12.3インチで、透明度はガラスとほぼ同じ84%である。透明ディスプレーの両面に映像を表示できるため、裏側からでも表示した文字を読める。
ディスプレーの画素数は1440×540(アスペクト比8:3)で、精細度は125ppi、表示可能な色数は4096色で、フルカラーまでは対応しないが、大半のカラー映像を表示できる。HDMIインターフェースを持ち、パソコンからサブディスプレーに対して映像を送る形で映像表示ができる手軽さも備える。
現在はサンプル出荷段階。2022年2月ごろまでに量産体制を整え、順次出荷を開始する。ディスプレーサイズを大きくすると表示可能な情報量が増やせるため、ユーザーからは大型化の要望が多く、現在はより大きなサイズの透明ディスプレーの開発を進めているほか、アスペクト比を16:9に対応させたモデルも開発中だという。
主な用途は会話の支援、通訳にも活用
この透明ディスプレーの使い方として、JDIが提案するのが、窓口などで用いられるアクリルパーティションと透明ディスプレーの組み合わせだ。
現在、新型コロナウイルス感染予防のために、接客現場にアクリル製のパーティションが置かれるケースが多いが、このパーティションのせいで声が聞こえづらく問題がある。そのため、会話を自動文字起こししたテキストを、パーティションに取り付けた透明ディスプレーに表示することで、円滑なコミュニケーションを可能にする。
テキストが表示されていると、もし聞き逃しても直前の発言をテキストで確認できるといったメリットがある。自動文字起こしソフトウエアの詳細は非公開としたが、話者が複数人いても区別して表示できる機能なども備える。合わせて「自動翻訳のニーズも大きい」とJDIの担当者は話す。