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 建設現場で見た建築資材ロス(以下建材ロス)に違和感を持ち続け、意匠設計者からスタートアップ企業の経営者に転身した若者がいる。余剰建材のレスキューサービスとアウトレット建材の販売などを手掛けるHUB&STOCK(東京・板橋)の豊田訓平代表取締役社長だ。

「HUB&STOCK」の宮垣知武氏(左)と豊田訓平代表取締役社長(右)。設計者から相談を受け、住宅で使う建材についてカラースキームを検討し、提案の準備をしている様子(出所:日経クロステック)
「HUB&STOCK」の宮垣知武氏(左)と豊田訓平代表取締役社長(右)。設計者から相談を受け、住宅で使う建材についてカラースキームを検討し、提案の準備をしている様子(出所:日経クロステック)
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 日経アーキテクチュア2022年11月24日発行号では、SDGsをテーマに特集を企画。建築実務者がSDGsに貢献する取り組み事例の1つとしてHUB&STOCKを紹介した。

 HUB&STOCKの豊田社長はなぜスタートアップ企業を立ち上げたのか。その経緯をコンパクトに紹介したい。

 豊田氏は集合住宅を多く手掛ける建設会社に新卒で設計者として入社。設計を担当している建物の建設現場を訪れる際、廃棄コンテナが気になっていたという。

 建設現場では、施工時に出る廃材のうち、分別やリサイクルが難しいものはまとめて廃棄する。こうした廃棄物の中に、新品未開封の余剰建材が含まれている。余剰建材はメーカーに返品することもできず、捨てるしかないためだ。豊田氏はこうした状況を目の当たりにし、強い違和感を持った。建材ロスを減らしたいと考えつつも、大きな建築プロジェクトの中で一人の設計者ができることは限られていた。

 建設会社で設計実務経験を積んだ豊田氏は、建材ロスの削減に取り組もうと一念発起。内装デザインを多く手掛ける設計事務所に転職した。できるだけ一人でプロジェクトをコントロールできる規模で取り組んでみたいと考えたからだ。だが、建材ロスはなかなか減らせなかった。例えば内装改修では、施工時に想定と異なる寸法であることが分かることがある。発注済みの建材が使えず、新たに発注してロスが発生するようなことも少なくない。

 「余剰建材が出るのは悪ではない。活用する方法が無いから廃棄される。余剰建材の受け皿があればいい」と、豊田氏は建材ロスを減らす新たな事業の検討を始めた。