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 原子力発電を再評価する風潮がにわかに高まってきた。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー調達リスクが高まっているのに加え、2050年にカーボンニュートラルを達成するための安定電源として再認識され始めている。国内では2011年の東日本大震災をきっかけにしぼんだ原発への期待だったが、打って変わったかのような雰囲気だ。

 この状況が彷彿(ほうふつ)とさせるのは、かつての「原子力ルネサンス」だ。2000年代に米欧を中心に巻き起こった原子力発電を再評価するムーブメントである。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故などを受けて停滞気味となっていた原子力開発だが、当時、エネルギー需要の拡大や環境問題などを背景に、建設計画が相次いでいた。

 現在の原発回帰の動きは、そんな原子力ルネサンスが再来したかのようにも見える。2022年8月、岸田文雄首相は政府のGX実行会議で次世代原発の開発と建設を検討するよう指示し、従来の方針を転換した。プラントメーカーは安全性を高めた大型軽水炉や小規模な原発に向く小型モジュール炉(SMR)といった新技術のアピールに力を入れ始めた。

 この方針転換が唐突だったかというとそうでもない。そもそも、政府は2021年10月に示した第6次エネルギー基本計画で、2030年の電源構成に占める原子力の割合を20~22%にするとの目標を掲げていた。これは大型軽水炉27基分に相当する規模だ。日本原子力産業協会企画部長の古塚伸一氏は「カーボンニュートラル達成に向けて原子力が数字で語られるようになったのは大きな転機だった」と話す。

 原発の運転期間は原則40年、最大60年と定められている。GX実行会議に提出された資料によると、現状のままだと国内の原発は現存36基(建設中を含む)から2050年には23基まで減少する。一方、国内の総電力需要については、2030年の約9300億kWhから50年には約1.4兆kWhまで増えると予測されている。原子力の割合を20%で維持するには40基が必要で、これが新増設に向けた根拠の1つになっている。