「直感的に動かせる」――。医師に手術支援ロボットの取材をした際、よく聞いたフレーズがこれだ。自分が手術支援ロボットの操作を体験したとき、まさにその通りだと感じた。
上下左右に動かしたり、物をつかんだり離したりする手元の操作がそのままロボットのなめらかな動きに反映された。素人でもこれほど直感的に使えると思うなら、手術のプロはどれほど実感するのだろう。
筆者はこのほど、済生会横浜市東部病院が主催したメディア向けの手術支援ロボット体験会に参加する機会を得た。横浜市東部病院は米Intuitive Surgical(インテュイティブサージカル)の手術支援ロボット「Da Vinci(ダビンチ)Xi」を導入しており、2018年にはロボット手術センターを開設した。保険適用が先行した泌尿器科のがん手術の他にも、胃がんや良性子宮疾患、肺がん手術など4つの診療科で12の術式を実施してきた実績があり、1000例以上を手掛けている。
ダビンチは患者の腹などに直径数mmの穴を数カ所開けて行う内視鏡手術で医師をサポートする。内視鏡手術では、医師が各穴に内視鏡と組織を挟んだりする棒状の手術器具を挿入し、内視鏡カメラの映像を見ながら手術する。一般的な内視鏡手術では、助手が内視鏡カメラを持って術野を映し、主に執刀医が手術器具を動かして組織を切ったり縫合したりする。
一方ダビンチは人間の代わりにロボットアームが内視鏡カメラや専用の手術器具を支える。執刀医は専用の機器に座り、カメラで映し出される患者の体内の映像を見ながら手元のコントローラーで遠隔から手術器具を動かすのだ。コントローラーは右手用と左手用で2つあり、それぞれに親指と中指を通す箇所がある。
つかむときは親指と中指を近付けて操作する
コントローラーにセットした左右の手や指の動きが手術器具の動きと連動する。器具を移動させたいときは手を上下左右に動かせばよく、何かをつかむときは親指と中指を近付ける。つかみながら器具の位置を変更したい場合は、親指と中指を近付けたまま手首をひねることで対応できる。
操作に慣れてくると、体験用に用意してもらったスポンジ状のリングを器具で挟み、細長い標的に通せるようになった。だが移動させる際、周囲の障害物にリングをぶつけてしまった。精密に動かすには訓練が必要だ。